①前立腺癌患者剖検検体の骨転移組織における神経伝達物質の発現の検討:当院における過去の剖検症例の中で、骨転移を有する前立腺癌症例、前立腺ラテント癌症例および乳癌等の他臓器癌症例の骨髄組織におけるAngiotensin II (Ang II)関連分子、ニューロンペプチド、神経伝達物質の骨髄内の発現を免疫組織染色により解析した。現在免疫染色を施行しているが、解析した因子の有意な発現亢進は認められていない。 ②前立腺癌患者血清における神経伝達物質の発現と疼痛との関連性の検討:当院に通院している骨転移を有する前立腺癌症例25例、および骨転移を有しない未治療前立腺癌症例10例より静脈血10mlを採取後、血漿を分離し、ELISA法により血漿エピネフリン、Ang II、Substance P、calcitonin-gene related peptide (CGRP)、アンギオテンシン1-7 (Ang IIに対する拮抗作用を有するアンジオテンシン系の分子)を測定した。血漿エピネフリン、Ang II測定は現在外部委託中である。これまでの検討で、Substance Pおよびアンギオテンシン1-7の発現は転移の有無で有意な差を認めなかったが、CGRPに関しては、転移あり群で有意な発現の亢進を認めた。さらに、患者の疼痛(VAS score)とCGRPの発現に関しても有意な関連を認めた。 ③前立腺癌患者末梢血中白血球の全トランスクリプトーム解析による、骨転移に伴う炎症関連分子の同定:骨転移を有する前立腺癌のうち疼痛スコアが高い症例5例、疼痛スコアの低い症例5例および骨転移を有しない未治療前立腺癌症例5例の計15例を対象に、末梢血単核球細胞よりRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いた全トランスクリプトーム解析を行った。現在データの解析中である。
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