研究課題
1) 前立腺癌(PC)組織における特異的なアミノ酸代謝シフトマーカーの発現と予後との相関の検討:組織内で増加の認められるアミノ酸を主に輸送するトランスポーター候補として、的なアミノ酸トランスポーターであるL-type amino-acid transporter 1 (LAT1)、LAT3、system ASC transporter 2 (ASCT2)、 system Xc transporter-related protein; (xCT)を想定し、これらの発現を免疫組織化学染色によって検討し、無増悪生存期間(PFS)との関連を統計学的に解析した。現在100例程度での統計学的検討を行った段階では、LAT1発現と予後との関連性が強く示唆されるデータが得られつつある。2) 進行性(転移性)PC組織における特異的アミノ酸代謝シフトマーカーの発現変化と治療抵抗性との関連性の検討:骨転移組織および内臓転移組織採取症例の登録作業が進んでいない。3)並行して進めている実験系で、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)細胞株に嫌気性解糖系の亢進に重要な酵素の一つである乳酸脱水素酵素(LDH)の阻害薬(sodium oxamate)を投与すると細胞内アミノ酸量が増加する傾向が示されている。このことから、CRPCのエネルギー依存性の観点で、嫌気性解糖系とアミノ酸代謝リプログラミングとのダイナミックな関連性が強く示唆される。
3: やや遅れている
前立腺癌組織におけるアミノ酸代謝シフトマーカーの免疫組織学的染色における適切な抗体の決定に予想以上に時間を要している。また、予後解析を行うには前立腺癌組織(症例)数が得られているが、去勢抵抗性に移行する有転移症例数を確保するのにはやや時間を要することが律速になっている。嫌気性解糖系とアミノ酸代謝シフトとの関連性についての検討は、LDH抑制とアミノ酸トランスポーター発現との関連性が示唆されるデータが得られつつあるが、それ以外の有用な知見は得られていない。
有転移症例の確保のためには、状況次第ではあるが、他学との共同研究体制の構築を早急に進める方針である。アミノ酸代謝マーカーとしてLAT1の重要性が強く示唆されるデータが得られつつあるので、今後は嫌気性代謝マーカーのLDHおよびアミノ酸代謝マーカーのLAT1を同時に抑制することで去勢抵抗性前立腺癌の新規治療体系を確立できるかどうかをin vitroおよびin vivoの両系で検討することを計画する。
免疫組織学的染色を行う患者症例数の登録が当初予定通りに進んでおらず、マウス購入や抗体購入に要する金額が当初予定金額を大幅に下回っていたこと、ならびにその解析に要するコンピュータの購入および人件費出費を控えたことが原因である。これらは、平成30年度には反動として計画以上に出費が多くなる可能性を示唆しており、次年度に使用する予定としたい。また、特異的分子阻害薬の購入には当初予算よりも多額の経費が見込まれる可能性が高く、その予算として使用計画を変更する予定である。
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