研究課題/領域番号 |
17K11171
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
守屋 仁彦 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (20374233)
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研究分担者 |
中村 美智子 北海道大学, 大学病院, 助教 (60571718)
篠原 信雄 北海道大学, 医学研究院, 教授 (90250422)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 性分化 / 環境化学物質 / 遺伝子多型 / 排泄の確立 |
研究実績の概要 |
環境省「子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加している対象者のうち、平成24年から我々の行っている追加調査に同意した約1600組の母児を対象に3歳時調査を行い、986組より回収が可能であった(回収率:65.6%)。 回収したアンケートをもとに3歳時点における脳の性分化を反映する性役割傾向調査の結果と排泄の自立の関連について解析を行った。日中の排尿の確立については、男児は女児よりも確立している割合が少なかった(20.8% vs 30.7%)。また性役割傾向スコアは男児で女児よりも有意に高かった(30.2±8.5 vs 27.9±8.7)。排尿確立の有無と性役割傾向スコアの関係を見てみると、男児では差は見られなかったが、女児では確立していない児の方が性役割傾向調査スコアが高かった。1週間の頻度を見てみると、男児では関連は見られなかったものの女児では失禁の頻度と性役割傾向調査の間に相関がみられた。 環境化学物質曝露の影響が遺伝子多型の修飾を受ける可能性を探索するため、北海道大学環境健康科学研究教育センターが施行している出生コホート“北海道スタディ”への参加者を対象に、臍帯血を用いてエストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子の遺伝子多型と胎児期の性ホルモン環境を反映するとされる第2指/第4指の関連を検討した。ESR1遺伝子一塩基多型としてPvuII (rs2234693)、XbaI (rs9340799)、rs2077647についての解析を行った。その結果、男児においてXbaI (rs9340799)の多型が第2指/第4指に影響を与えていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3歳時調査の回収が終了し、第2誌指/第4指の測定、排泄確立に関するアンケートや性役割傾向調査の解析、環境化学物質の測定も終了している。しかしながら3歳時調査の対象となる児の遺伝子多型の解析や臍帯血中の性ホルモンの測定がやや遅れている。3歳時調査を行った児は出生時の身体所見のデータも回収されており、3歳時の身体所見や脳の性分化との関連と環境化学物質との関連の解析が途中であることもやや遅れているとした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
脳の性分化と排泄の確立の関連が明らかとなったため、これまで測定が終了した胎児期の性ホルモンに影響を与えると考えられている妊娠初期母体尿の化学物質(フタル酸エステル類10化合物:MEHP/MEHHP/MEOHP/MiBP/MECPP/MBzP/MiNP/cx-MiNP/OH-MiNP、ビスフェノール類3化合物:BPA/BPF/BPS)の514検体を用いて、臍帯血中の性ホルモンへの影響、出生時および3歳時に測定を行った身体的性分化への影響、3歳時の性役割傾向調査の結果に対する影響、および排泄確立に与える影響を解析する予定である。 北海道大学環境健康科学研究教育センターが施行している出生コホート“北海道スタディ”を対象とした研究では遺伝子多型が身体的性分化に影響を与えることが明らかとなったため、性ホルモンに影響を与えるとされる環境化学物質の身体的性分化への影響が遺伝子多型によりいかに修飾されるかについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果が出始めているものの伝子多型の解析や臍帯血中の性ホルモンの測定がやや遅れていることから次年度使用額が生じた。 繰越金は次年度の性ホルモン測定や遺伝子多型の解析および成果発表のために使用する予定である。
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