令和元年度は、動物及び細胞モデルを用いて炎症反応におけるチャネル間の相互作用の役割及び作用機構を検討した。得られた結果は以下の通りである。 1)Cyclophosphomide (CYP)によるマウス間質膀胱炎は、インフラマソーム(inflammasome)活性化と深く関係している。インフラマソームインヒビターBHBを体内投与することでCYPが引き起こした膀胱刺激症状が軽減された。培養尿細管細胞においてTRPV4 agonistはインフラマソーム活性化を誘導し、インフラマソームインヒビター処理により細胞傷害が抑制された。 2)ギャップ結合タンパクはインフラマソーム活性化に参与している。マウス腹腔マクロファージ及びRAW 264.7 細胞においてLPS及びATP刺激によるインフラマソームの活性化は、ギャップ結合タンパク質Cx43の上昇を伴なっていた。Cx43 siRNA及びギャップ結合インヒビター処理することで、マクロファージのインフラマソームの活性化が軽減された。 3)インフラマソーム活性剤LPS及びATPは細胞内NADPH oxidaseのレベルを刺激し、ROSの産生を誘導した。抗酸化物質GSH及びNOX2インヒビター処理によってインフラマソーム活性化が抑制された。 4) ギャップ結合タンパクCx43は、細胞内NADPH oxidaseレベル及びROSの産生の調節に参与している。Cx43タンパクをダウンレギュレーションすることで、酸化ストレスを解消し、インフラマソームの活性化を抑制した。 以上のことからTRPV4及びCx43チャネルの相互作用は酸化ストレス及びインフラマソームの活性化を介して膀胱炎の発生・発展に関与していることが明らかになった。
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