研究課題
われわれはこれまでにマウスおよびラビットを使用した骨髄幹細胞による膀胱および尿道括約筋の再生の可能性、および、よりよい再生を完成させるための組織学的な再生の骨組み(足場)についての検証など、一連の研究を行い、その成果を広く公表してきてた。現在は、その応用範囲を広げ、自己脂肪幹細胞を利用した研究も行っている。本研究はこれまでのわれわれの一連の研究の延長線に位置するものとして進めてきた。本年度は、ラットおよびラビットの大腿骨骨髄より注射針で骨髄由来幹細胞を採取、もしくは腹腔内の脂肪組織より、脂肪組織を採取して、脂肪組織由来幹細胞を分離し、血清および抗生剤附加の培地の中に入れ、培養皿で7日間初代培養した。培養途中の5日目の時点で、GFP(Green fluorescence protein)発現遺伝子を培養細胞内にトランスフェクションしてマーキング、もしくは蛍光時間の長いQtracker cell labeling kits 1重染色によるマーキングを行った。その後、3Dプリンター技術を応用した立体構造体を作製できるCyfuse社のKENZAN(商標名)を使用して、それぞれの幹細胞の立体構造体を作製した。その構造体をラットの凍結傷害による膀胱、もしくはラビットの焼灼損傷尿道に移植した。構造体が生着したかの確認は、通常の顕微鏡、および蛍光顕微鏡を用いて組織学的に再生を確認した。今後は、膀胱内圧検査などの手法を用いた機能的な膀胱および尿道の再生の確認、および、同じ手法を用いて、尿管、尿道の再生を念頭においた3D構造体の中でも管腔状の構造体の作製を検討している。
2: おおむね順調に進展している
再生能力をもっている幹細胞の採取部位であるが、骨髄以外に腹腔内の脂肪組織から幹細胞を分離培養することに成功した。その後、シート状に培養増殖させて、積み重ねることによって、幹細胞の多層化を試みたのであるが、シート状の構造体を重ねる手法では、重ねるにつれて、重ねた構造体の内部に酸素、栄養が入らなくなり培養幹細胞の死滅を認め、シートを積み重ねることによる多層化には限界があることが判明した。そのため、近年、注目されている3Dプリンター技術を用いて立体構造体を作製できるCyfuse社のKENZAN(商標)を使用して、幹細胞の立体構造体を作製し、構造体内部にも酸素、栄養が入るように考案した。その立体構造体をラットの損傷膀胱、もしくはラビットの損傷尿道に移植し、組織学的に再生を確認した。本研究はおおむね順調に進展している。
3Dプリンター技術を用いて立体構造体を作製し多層化構造体を作製することに成功した。凍結、電気凝固による焼灼によって、膀胱、尿道に損傷を与え、その部位に構造体を置く手法で、本年度は通常顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いて組織学的な検証は達成した。今後の研究の推進としては、膀胱内圧検査などの手法を用いて、機能的な再生の確認を行う予定である。また、同様の技術を応用して、尿道や尿管の再生を念頭において、3D管腔状構造体の作製を試みることを検討している。
(理由)当初計画で見込んだよりも、検査試薬、薬剤などが安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。(使用計画)次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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巻: 印刷中 ページ: -
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