臓器の血流が障害されるとNrf2の発現が亢進し、抗酸化遺伝子群の転写が活性化される。膀胱においても血流障害により反応性にNrf2の発現が亢進するのではないかと仮説をたてた。またNrf2の発現を誘導した状態では、膀胱の虚血障害を抑制できると考えた。 上記の仮説を証明するために8週齢雌性C57BL/6マウスにL-NAME(1g/L)または水を飲水投与し(day0~7)、7日目に各種評価した。またスルフォラファン群ではスルフォラファン(5mg/kg)を飲水投与し(day0~7)、同じく7日目に評価を行った。またNrf2ノックアウトマウスにおいても検討を行った。 まず膀胱血流をCCD血流計にて測定したが、L-NAMEの投与により膀胱血流は低下しており、これはスルフォラファンの投与や、Nrf2ノックアウトでも同様に血流の低下を認めた。ELISAにてNrf2の発現量を定量化するとL-NAMEの投与により反応性に膀胱でのNrf2の発現が亢進したが、スルフォラファンの投与によりさらに発現が亢進していた。Nrf2の免疫染色では、正常ラットでは尿路上皮の細胞質に発現が確認されたが、L-NAMEの投与により核へ移行していた。酸化ストレスマーカーであるMDAは、L-NAME群、Nrf2ノックアウトマウスにおいて亢進し、スルフォラファンの投与により抑制された。膀胱内圧測定にて排尿間隔を測定すると、L-NAMEの投与により頻尿となるが、スルフォラファンの投与により抑制された。 以上の結果より、骨盤内虚血による排尿筋過活動においてNrf2は保護的作用を有し、治療ターゲットとなりうることが示された。
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