研究課題/領域番号 |
17K11182
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
武中 篤 鳥取大学, 医学部, 教授 (50368669)
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研究分担者 |
本田 正史 鳥取大学, 医学部, 准教授 (20362890)
久留 一郎 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60211504)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 排尿機能 / 再生医療 / 生理学 / 排尿筋低活動 / 脂肪幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者が現在まで行ってきた正常下部尿路機能および下部尿路機能障害に関する基礎研究手法を用いて、脂肪幹細胞シートの排尿筋低活動に対する有効性を包括的に明らかにし、本治療法を臨床応用レベルまで展開するための研究基盤を確立することが目的である。 令和元(2019)年度は、前年度までに準備を進めてきた脂肪幹細胞シートを用いて、排尿筋低活動ラットモデルである膀胱凍結傷害ラットモデルの膀胱機能障害に対する脂肪幹細胞シートの有効性を検証した。 実験用動物として10週齢Lewis雌ラットを使用した。イソフルレン麻酔下にラット下腹部を切開し、ドライアイスで冷却したアルミ棒を膀胱前面に接触されることで膀胱凍結傷害モデルを作製した。脂肪幹細胞シートは、Lewisラットの鼠径部周囲の脂肪組織を採取後、コラゲナーゼ処理し細胞成分をフィルターで濾過し遠心処理を行い、基礎培地にて継代培養を行い作製した。膀胱凍結傷害モデル作成3日後に、イソフルレン麻酔下に膀胱凍結傷害部位に脂肪幹細胞シートを貼付した。 細胞シート移植7日後に膀胱内圧測定、膀胱組織のPCR検査を実施した。膀胱内圧測定では細胞シート移植群は、凍結傷害群と比較して残尿量および溢流性尿失禁割合の有意な改善を認めた。また、VEGFおよびHGF発現量はシート移植群が凍結傷害群と比較して有意に高値であった。以上より、脂肪幹細胞シートは膀胱凍結傷害モデルの膀胱機能障害を改善する可能性があり、この改善には血管新生や線維化抑制に役割を持つVEGFおよびHGFが関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29(2017)、平成30(2018)、令和元(2019)年度を通じて、脂肪幹細胞シートの安定した作製方法の確立、膀胱凍結傷害モデルの安定した作製方法の確立、膀胱凍結傷害モデルの膀胱機能障害に対する脂肪幹細胞シートの有効性に関する検討を進めてきた。結果として脂肪幹細胞シートは膀胱凍結傷害モデルの膀胱機能障害改善に有用であり、その改善作用にはVEGFおよびHGFが関与していることを明らかにした。 しかし上記の結果のみでは脂肪幹細胞シートの有効性を包括的に明らかにしたとは言えず、膀胱組織切片を用いた等尺性張力試験や膀胱の組織学的検討を行うことが必要と考えており、今後この課題に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年(2020)年度は平成29(2017)、平成30(2018)、令和元(2019)年度の研究成果を踏まえて、令和2年(2020)年度は①膀胱組織切片を用いた等尺性張力試験、②脂肪幹細胞シート膀胱移植による膀胱排尿筋再生の組織学的解析を行う。具体的には以下の実験を行う。 ①膀胱組織切片を用いた等尺性張力試験:脂肪幹細胞シート移植7日後に膀胱組織より短冊状の切片を作製し、Krebs-Henseleit液を入れたorgan bath内に懸垂し、カルバコール等の各薬剤に対する収縮反応の濃度反応曲線を調べる。②脂肪幹細胞細胞シート膀胱移植による膀胱排尿筋再生の組織学的解析:GFP抗体と平滑筋特異的抗体を用いた組織学的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29(2017)、年平成30(2018)、令和元(2019)年度を通じて、脂肪幹細胞シートは膀胱凍結傷害モデルの膀胱機能障害改善に有用であり、その改善作用にはVEGFおよびHGFが関与していることを明らかにした。しかしながら、ここまでの研究に時間を要し、令和2年(2020)年度に膀胱組織切片を用いた等尺性張力試験や膀胱の組織学的検討を行うことになったため、次年度使用額が生じることになった。 令和2年(2020)年度は①膀胱組織切片を用いた等尺性張力試験、②脂肪幹細胞シート膀胱移植による膀胱排尿筋再生の組織学的解析を行うため、費用は本研究の遂行に用いる計画である。また、本研究成果は、国際学会および国際学術誌での発表を予定しており、その費用としても使用する計画である。
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