研究課題/領域番号 |
17K11185
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
有木 茂 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (80464478)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自然免疫 / コレクチン |
研究実績の概要 |
今年度は、肺コレクチン(SP-AおよびSP-D)の大腸菌に対する増殖抑制活性が、異なる種類の緩衝液中でどのように変化するのかを詳細に解析した。また、SP-Aのコラーゲン様ドメインとSP-Dの糖鎖認識ドメインを組み合わせたキメラタンパク質を用いて、増殖抑制活性と構造の機能相関を解析した。その結果、カルシウムイオンを含む緩衝液中では、コレクチンが十字架様構造をとっていることが増殖抑制活性に必須であることが明らかとなった。一方、カルシウムイオンを含まない緩衝液中では、コレクチンが花束様構造をとっていることが必須であった。いずれの緩衝液中でも、コレクチンの糖鎖認識ドメインの種類は結果に影響しなかった。これらの結果は、緩衝液の組成が異なることでコレクチンが大腸菌へ結合できなくなることに起因する可能性がある。そこで、大腸菌とコレクチンをそれぞれの緩衝液中で混合した後、大腸菌を遠心により回収して、結合したコレクチンをウエスタンブロッティングにより検出した。その結果、SP-A、SP-D、キメラタンパク質の全てが、いずれの緩衝液中でも大腸菌に結合していた。 ここまでの結果から、コレクチンの大腸菌に対する増殖抑制活性には、コレクチンの結合特異性よりもオリゴマー構造が重要であると考えられる。そこで、SP-A(花束構造)、SP-D(十字架構造)、キメラタンパク質(花束構造)を混合した場合にどのような効果が得られるのかを解析してみると、予想通り、キメラタンパク質はSP-Aと相加的にはたらいたが、SP-Dの効果は抑制した。 今年度の解析から、大腸菌に対するコレクチンの構造機能相関をこれまでよりも詳細に明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コレクチンの構造機能相関の解析は当初計画通りに進んでいるが、SP-AとSP-Dの相乗効果の解析や、膀胱上皮への結合実験に着手できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はコレクチンに相乗効果があるのかを重点的に解析する。現在のところ、研究計画を大幅に変更しなくてはならない結果は得られていないので、当初研究計画に沿って研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに準備していた組換タンパク質の収量が想定以上だったために、今年度はタンパク質の発現・精製に助成金を使用する必要がなかった。また、昨年度に予想外の結果が得られたことを受けて、コレクチンの構造機能相関の解析を詳細に行なった。これらの解析は既存の消耗品等で遂行可能であった。一方、当初計画では今年度から着手するはずであった膀胱上皮との結合解析、コレクチンの相乗効果の解析など、新規実験系を使用する実験に着手できなかった。 本年度の未使用分は、これら着手が遅れた実験系の構築に使用する。また、今年度の解析に想定以上の組換えタンパク質を使用したため、新たに組換えタンパク質を発現・精製する必要があるため、それらに必要な試薬や消耗品の購入にも使用する。
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