本研究の目的は、種々の臓器における組織幹細胞に発現しているBmi1がマウス腎臓に発現しているか解析し、腎臓組織幹細胞として機能しているか検討すること、さらに、腎臓組織幹細胞の増殖・分化のメカニズムを明らかにすることである。 令和2年度のテーマは、マウス交配の関係で解析が遅れているBmi1陽性細胞の存在部位の同定、腎障害後の再生におけるBmi1陽性細胞の機能解析を行うことであった。具体的には、Bmi1creER/+/Rosa26rbw/+ マウス(タモキシフェンを投与すると全身緑色の細胞からBmi1陽性細胞だけが、青色、オレンジ色、赤色にランダムに変わる)において多色細胞系譜追跡法を用いて、タモキシフェン投与2日後のマウス腎臓組織内のinitial Bmi1陽性細胞と既知の腎組織マーカーを免疫組織学検査を用いて観察することである。この結果、Bmi1陽性細胞は近位尿細管に存在していた。また、腎障害後の再生におけるBmi1陽性細胞の機能解析実験として、シスプラチンを投与して腎障害を発生させたBmi1creER/+/Rosa26rbw/+ マウスにおいて多色細胞系譜追跡法を用いてBmi1陽性細胞の増殖・分化の状態を定常状態と比較することである。腎障害後、Bmi1陽性細胞からBmi1由来細胞が供給された。腎障害時のBmi1由来細胞の供給は定常状態よりも早く行われた。令和2年度に予定していた実験は終了し現在は解析中である。
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