研究課題/領域番号 |
17K11204
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
林 祐太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40238134)
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研究分担者 |
安井 孝周 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40326153)
水野 健太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70448710)
守時 良演 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (50595395)
西尾 英紀 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10621063)
加藤 大貴 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (00620931)
梅本 幸裕 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80381812)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セルトリ細胞 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
精巣の機能不全は男性不妊症や内・外性器の発育障害をきたし、少子化が進むわが国において取り組むべき重要疾患である。私たちは、精巣発生や精子形成メカニズムの研究を通じて精巣組織における「セルトリ細胞」の重要性に注目している。セルトリ細胞は、胎児期には内分泌細胞、成熟期には精子形成の支持細胞と、発生・発達の時期によって異なる機能を有する。こうしたセルトリ細胞の分化・成熟メカニズムは明らかにされておらず、疾患との関連性も明らかでない。そこで本研究では、セルトリ細胞の分化・成熟にかかわる分子生物学的基盤を明らかにすることを目的として実験計画を立案した。 平成29年度では、セルトリ細胞の成熟過程を明らかにするため、セルトリ細胞の成熟ステップを様々な可視化マーカーによって判別することを計画した。セルトリ細胞に発現し、成熟に従って発現変化する遺伝子として AR(アンドロゲンレセプター)、 AMH(抗ミュラー管ホルモン)遺伝子がある。 これらの遺伝子座にレポーター遺伝子 GFP をノックインした細胞を作成する予定であったが、その前段階の実験として、正常精巣のセルトリ細胞においてARおよびAMHタンパク発現を免疫染色で検討した。その結果、幼若精巣組織ではAR発現を認めなかったのに対し、精巣の成熟にしたがってARがセルトリ細胞で発現することを見出した。また、レポーター遺伝子を導入するために、精巣組織そのものに遺伝子導入するよりも、細胞レベルでの導入の方が効率がよく、容易であると考え、正常精巣からセルトリ細胞だけを分離すること試みた。生後20日のSDラット精巣を用い、機械的・物理的に分散を行い、マトリゲル培地で初代培養を行ったところ、20個の精巣から、平均8.435×106個の細胞を分離することができた。またこの細胞は、セルトリ細胞マーカーであるWT1タンパクの発現を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、平成29年度では、セルトリ細胞で発現するAR、AMH遺伝子座にGFPをノックインした遺伝子組み換え細胞を、CRISPR/Cas9系を用いて作成することを予定していた。さらに、遺伝子組み換え動物の作成も行い、この動物精巣におけるセルトリ細胞の成熟ステップを可視化するとともに、大きく成熟度が変化する時期のセルトリ細胞で発現変化する遺伝子群をマイクロアレイで検討することを予定していた。平成29年度では、正常精巣組織におけるAR発現変化を確認し、細胞を組織から分散、初代培養することができたものの、遺伝子組み換え細胞の作成にはいたっていないため、当初の研究計画にくらべると、やや遅れていると判断される。正常精巣におけるAR発現を検討するための免疫染色、Western blotting の作業について、手技的な問題や抗体の種類などによって進まなかったことが原因と考えられる。また、正常精巣から細胞を分散することについても、私たちにとってはじめての試みであり、多段階にわたる実験であるため、選別途中での細胞の回収率が低いという問題点が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
セルトリ細胞を純度よく選別するために、組織からの分散をしっかりと行い、1つ1つの細胞へしっかり分離することを行う。また、精子形成細胞やライディヒ細胞などセルトリ細胞以外の細胞の混入を減らすため、ラミニンコート培養皿の使用を行う。また、フローサイトメーターを用いてセルトリ細胞に特異的発現するSOX9やWT1などのタンパク質を認識する特異抗体を利用した選別法も試みたい。また、細胞を分離するのではなく精巣の小塊で培養する、器官培養系による方法を行うことも検討したい。同時に、株化されたセルトリ細胞(TM4)を用いて、遺伝子導入実験や、CRISPR/Cas9によるノックインセルトリ細胞の樹立を行い、導入効率などの予備実験を進めておきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の重要な要素の一つである生殖細胞を用いたin vitro実験で想定していた結果がでず、研究計画の一部を見直していたため研究計画が遅れ次年度使用額が生じた。H30年度はH29年度内に完成を予定していた正常精巣細胞から遺伝子組み換え細胞の作成を行いたい。
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