研究課題
抗がん剤の中でもドキソルビシンは男性ホルモン受容体の阻害作用を有し、心筋を老化させることが報告されている。ドキソルビシンは小児がんや血液腫瘍に対して汎用される抗がん剤である。そのため、将来の男性性機能に及ぼす影響が懸念されるが、添付文書に記載されていない。ドキソルビシンが男性ホルモン受容体を介して男性性機能へ及ぼす影響は十分考えられ、がんサバイバーのQOL向上のために詳細な検討が必要である。小児がんや血液腫瘍に用いられる抗がん剤のドキソルビシンが男性性機能へ及ぼす影響、およびその発症メカニズムを男性ホルモンに着目して検討した。本研究では性成熟が完了した12週齢の雄性Wistar/STラットを用い、ドキソルビシン(DOX)投与群と生理食塩液(vehicle)のみ投与するControl群の2群を作成し、抗がん剤の勃起機能へ及ぼす影響を評価した。DOXを4週間投与した際、1 mg/kgと2 mg/kgでは勃起機能に変化は生じなかった。一方、3 mg/kg投与した場合、ラットの勃起機能を低下させる可能性が示唆された。3 mg/kgの投与量で経時的なラットの勃起機能の変化を検討したところ、2週目までは変化しなかったが、4週目に勃起機能が低下した。また、4週間DOXを3 mg/kgの投与量で投与したラットより摘出した陰茎海綿体を用いて、血管内皮機能障害が観察された。これに対し、DOX群に対してテストステロンを投与してもラットの勃起機能は低下したままであった。テストステロン補充療法に代わる新規治療法を見出すため、DOX投与による心毒性の軽減に有用であると報告されているdexrazoxane(DEX)を投与したところ、Control群と同程度までラットの勃起機能が改善することが示唆された。
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