研究課題/領域番号 |
17K11207
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
岡田 弘 獨協医科大学, 医学部, 教授 (00177057)
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研究分担者 |
小堀 善友 獨協医科大学, 医学部, 講師 (50566560)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 体外培養 / 精子形成 / 凍結保護材 / 幼弱精巣 |
研究実績の概要 |
幼弱マウス精巣組織を凍結保存-融解-体外器官培養の最適凍結条件を検討した。 1. 凍結保存用の精巣組織片の作成方法に関する検討 ①精巣白膜が付着したまま組織片を作成するか、② 精巣白膜除去して精巣組織片を作成するかの検討を行った。凍結保存液はStem Cell Keepを使用した。この結果、凍結保存-融解時の生存精巣細胞率には、差がなかった。しかし、白膜を除去した精巣組織の方が、凍結保存-融解-体外培養での精子形成効率が高く、作出された精子を用いたICSIによる胚盤胞到達率も高率であった。2. 凍結保護剤の検討 幼弱マウス精巣組織凍結保存に、①DMSOを含む細胞凍結保護液 ②幹細胞凍結保存用のStem Cell Keepのいずれが 、幼弱精巣凍結保存に最適かを検討した。この結果、Stem Cell Keepを用いた方が、凍結保存-融解後の生存精巣細胞率が高かった。融解後の精巣組織を体外器官培養して得られる精子数もStem Cell Keepの方が多かった。作出された精子をICSIに用いた場合の、胚盤胞到達率もStem Cell Keepを用いた方が高かった。3. 精子凍結方法の検討 緩慢凍結法と、超急速凍結法であるガラス化法のいずれが、幼弱精巣精子凍結保存に最適かを検討した。幼弱マウス精巣組織を凍結保存-融解後の、生存精巣細胞率はガラス化法の方が緩慢凍結法よりも高かった。融解後の精巣組織を、体外器官培養して得られる精子数も、ガラス化法の方が多かった。作出された精子をICSIに用いた場合の、胚盤胞到達率もガラス化法を用いた方が高かった。上記から、幼弱マウス精巣組織を凍結保存-融解-体外器官培養で精子作出しICSIに用いるには、白膜除去した精巣組織を、Stem Cell Keep中で、ガラス化法による超急速凍結保存が、最も有用であるとの結論に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
幼弱マウスの凍結保存-融解ー体外器官培養で成熟精子を作出し、これを用いた体外受精系は安定して稼働している。さらに、既に最適な凍結保存条件の決定も終了している。 現在、平成30年度のアンケート調査に向けて、予備調査を行う体制を構築している。
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今後の研究の推進方策 |
若年男児の精巣組織を凍結保存し、融解後に体外培養することで精子形成を起こさせる方法について、Childhood Cancer Survivor(CCS)の保護者とがん治療担当者への、2種類の意識調査を行う。 第1調査: CCSの保護者に対する調査。平成29年度に確立した、幼弱マウス精巣の凍結保存-融解―体外培養により精子作出する方法が、ヒトに応用可能になった場合にCCSの保護者の受容について調査する。 この場合のCCSの保護者は、自身の子どもの治療に当たっては、妊孕性温存手段がなかったため、これを実施していない人たちである。 ①CSSに妊孕性温存方法があれば、これを受けさせたかったと考えるか。 ②妊孕性温存方法があれば、困難を伴うがん治療に対しての受け入れや積極性に変化があったか。 ③精巣組織凍結保存-融解-体外培養による妊孕温存法を自身の子どもに応用することを希望したか。 第2調査: 小児がん治療担当医に対するアンケート調査。 精巣毒性のあるがん化学療法を受ける予定の若年男子の保護者に対して、「精巣組織凍結保存-融解―体外培養による精子作出をすることで妊孕性温存可能」であれば、この方法を患児の保護者に対して勧めるか否かを調査する。 さらに、上記の妊孕性温存方がある事での、がん化学療法を遂行する上でのメリット・デメリットに関して調査する。 若年男子精巣組織を、凍結保存-融解-体外培養して精子作出する方法をヒトに応用するために、施設の倫理委員会(IRB)に対して倫理審査を申請する。 IRBからの許可を得た上で、実際にがん化学療法を受ける若年男子の保護者に対して、精巣組織凍結保存-融解-体外培養による精子作出法について説明し、同意が得られれば、平成29年度に確立した方法で、精巣組織凍結保存-融解―体外培養を行い、精子作出の可否を検討する。 精子が作出された場合は凍結保存する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費及び人件費として申請した金額を使用しなかったため残金が生じた。次年度は国際学会の発表を予定しているためほぼ予定通りに使用する。
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