研究課題/領域番号 |
17K11215
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
熊澤 由紀代 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (70400504)
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研究分担者 |
佐藤 亘 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (10726441)
清水 大 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (60400503)
高橋 和政 秋田大学, 医学部附属病院, 技術系スタッフ (60791910)
佐藤 敏治 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (70636183)
三浦 広志 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (80375302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胚盤胞 / ICM / TE / タイトジャンクション / Na-K ATPase |
研究実績の概要 |
本研究における検討項目の1つである「ヒト凍結胚融解後胚の胞胚腔拡張と胚盤胞形成TE,ICMの細胞数および細胞配置の検討」については。実際に正確にその数を計測した結果、良好胚では栄養外肺葉細胞(TE)数が不良なものに比べて優位に多いことがを証明し、国際誌にて報告を行った(Iwasawa, Takahashi, Kumazawa, Terada PloS ONE 2019)。さらに、胚発生における電解質動態についてイオンインジケータを用いた解析をマウス胚で試み、これまで、イオンポンプ阻害剤を使用した研究等で間接的に示されてきた胚発生、特に桑実胚から胚盤胞でのナトリウムイオン・カリウムイオンの時間的・空間的動態について世界で初めて視覚化に成功した。この結果は国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚の動的挙動・構成細胞数の正確な測定など胚盤胞の動態に関して細胞生物学的な検討に加え、イオンインジケータを用いて電解質の時間的・空間的動態の視覚化を行い、これまでは論理的に示されてきた電解質の動態を実際に視覚化することに成功した。これは哺乳動物の胚に関しては世界で最初のことであり、胚発生における細胞生理学に大きく寄与するものである。また桑実胚から胚盤胞における特徴的な挙動すなわち胞胚腔の形成やコラプスと呼ばれる収縮現象を詳細に説明するのに極めて有用な知見であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
胚盤胞においてその形態形成(胞胚腔形成)にはTE細胞間のTight junnctionと呼ばれる強固な細胞接着による細胞間バリアとNa+/K+-ATPaseによる胞胚腔内へのNaイオンの取り込みと、それに伴う水の胞胚腔内への移動が重要であることから、ZO-1、ZO-2といったtight junction関連タンパク質およびNa+/K+-ATPaseについて免疫染色を用いてより重点的に解析する。またこれまでの研究で確立に成功したイオンインジケーターを用いた電解質可視化の技術を用いて電解質の時間的・空間的動態と胞胚腔形成に関わるタンパク質群との関連を検討し明らかにする。なおイオンインジケータによる電解質の可視化についてはマウス胚のみで行っているため、ヒト胚においても有効であるかを検証する。また、胞胚腔内の電解質濃度の正確な定量も重要な知見となると考えられることから、その手法の開発と、実際の定量を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究で、胚盤胞の内部細胞塊および栄養外胚葉細胞と胚の動的挙動との関連、および胚発生における電解質の時間的・空間的動態についての知見を得ることができたが、当初より計画していた胚盤胞の収縮・拡張運動の機構と関連性については未だ未検討である。 また、イオンインジケータによる電解質の可視化はマウス胚でしか試みておらず、ヒト胚にも有効であるかの検討が必要である。さらに、胞胚腔の拡張・維持には胚内外のナトリウムイオンの濃度勾配が重要であると考えられ、それを検討するには濃度を正確に測定できる系が必要である。現在使用しているインジケータでは正確な定量は困難であり、インジケータの種類を変更するなど、正確に電解質濃度を測定できる系の確立が必要である。
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