研究課題/領域番号 |
17K11216
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐藤 朗 秋田大学, 医学部附属病院, 准教授 (50361225)
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研究分担者 |
熊澤 由紀代 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (70400504)
佐藤 敏治 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (70636183)
三浦 広志 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (80375302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炎症マーカー / 遺伝子多型 / CRP / IL-6 / 切迫早産 / 絨毛羊膜炎 |
研究実績の概要 |
近年、細菌感染、悪性腫瘍などの炎症反応と関連する疾患とCRP遺伝子多型の関連性が注目されている。一方、IL-6のpromotor領域の遺伝子多型がCRP産生に関与しているとの報告がある。我々は切迫早産における羊水中のIL-6、好中球エラスターゼなどの絨毛羊膜炎の炎症マーカーの有用性を明らかにし、早産の子宮頸管熟化の機序にヒアルロン酸合成酵素(HAS)が関与していることを解明した。これらの成果を踏まえると、多彩な免疫ネットワークの中でCRP、IL-6遺伝子多型が絨毛羊膜炎の早産の発症機序に大きく関わっていることが想定される。本研究では、CRPおよびIL-6遺伝子多型と絨毛羊膜炎による早産との関連性を明らかにする。さらに遺伝子多型に基づいた妊婦健診プロトコールを作成し、新しい早産管理の前方視的な検証へと発展させるべく検討を継続している。 平成29年度は、正常妊娠例、切迫早産例におけるCRPおよびIL-6遺伝子のSNPsの解析と各種炎症マーカー、周産期予後との関連性の解析を行い、平成30年度もこれらの解析を継続し、症例数を集積した。小規模の症例数の統計学的な検討ではあるが、CRPの血中濃度上昇に関与しているSNPが切迫早産に関与している可能性が示唆される結果が得られた。また、平成31年度は、2年間の結果として得られた切迫早産に関連性のあるSNPに関して、CRPおよびIL-6遺伝子多型とIL-6R、HASを介した頸管熟化の影響に関しての検討を行う。血液検査でCRPおよびIL-6遺伝子多型の判定を行い、摘出子宮からヒト子宮頸管由来の培養細胞による実験系の検討を行う。これらと平行して、切迫早産に関与している可能性があるCRPおよびCRPに関連するIL-6のSNPに関して、妊娠初期に切迫早産リスク群を抽出し、絨毛羊膜炎の予防に特化した新しい妊婦管理、早産管理システムの構築を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、CRP遺伝子多型およびCRPに関連するIL-6遺伝子多型の解析に関しては、プローブ合成の可能な遺伝子部位に限定して、血液検査(白血球、CRP)と子宮頚管の炎症マーカーなどの臨床所見、周産期データと連結したSNPs解析を行った。特に問題なく経過した妊婦29名(正常コントロール群)と切迫早産と診断された妊婦12名(切迫早産群)のデータを得た。CRPの血中濃度上昇に関与しているSNPに関しては、統計的解析により既報と同様にCRP血中濃度との関連性が認められ、加えて切迫早産群に関与している可能性を示唆する結果が得られた。症例を集積して解析を継続中である。 日本産科婦人科学会総会、日本周産期新生児学会、日本遺伝カウンセリング学会などの当研究の関連部門の研究発表に出席し、最新の知見を収集して、研究の進捗に活用している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も切迫早産症例、正常妊娠例の集積を継続する。各種炎症マーカーとして、血液検査による白血球数、CRPの測定を行い、子宮頸管粘液を採取し、好中球エラスターゼ、癌胎児性フィブロネクチン、ヒアルロン酸、IL-6、IL-8、CRPを測定する。分娩に至った際は、周産期予後(分娩方法、分娩時妊娠週数、出生体重、性別、出生時のApgar Score、臍帯血動脈血液ガス分析、NICU管理の有無、人工呼吸管理期間、NICU入院期間、周産期死亡率、胎盤病理検査所見)のデータ入力を定期的に行い、これらの炎症マーカー、周産期予後とCRPおよびIL-6遺伝子多型の統計的な解析を継続する。また、切迫早産に関連性がある傾向にあったCRP血中濃度に関与するSNPについては、子宮摘出術の適応の患者のSNP解析を行い、摘出子宮からヒト子宮頸管由来の培養細胞による実験系の検討を行う。並行して、切迫早産に関連性がある傾向にあったCRPおよびCRPに関連するIL-6のSNPに関して、妊娠初期に切迫早産リスク群を抽出し、感染性の切迫早産の予防に重点を置いた新しい妊婦管理、早産管理システムの構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の際、CRP遺伝子多型、IL-6遺伝子多型のSNPs解析において、一部のSNPs解析に必要なプローブ合成が困難なことが判明し、SNP解析の進捗が停滞したため、SNPs解析の費用に関して次年度使用が生じることとなった。その際の次年度使用額が、そのまま今年度の次年度使用額に影響している。また、CRP遺伝子多型、IL-6遺伝子多型に関連する部位のSNPs解析の検索において、早産に有意に関連するSNP部位の傾向の結果に基づいて、ヒト子宮頸管由来の培養細胞による基礎実験と感染性の切迫早産に重点を置いた新しい妊婦健診システムの構築を並行して行い、次年度使用額を使用する予定である。
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