研究課題
昨年度に引き続き、羊水中に存在する肺サーファクタントと胎脂の体内動態を評価するために、125I標識肺サーファクタント製剤(サーファクテン:田辺三菱製薬)を用いた実験を行った。まず、SIB法を用いて125I標識サーファクテンを合成し、高速液体クロマトグラフィによりin vitroでの安定性を評価した(実験1)。次いで、塩酸メデトミジン、ミダゾラム、酒石酸ブトルファノールによる3種混合麻酔下に、125I標識サーファクテンをウサギ羊水腔内に投与した。60分後、12時間後、24時間後、48時間後に帝王切開を行い、母体と胎仔の125I標識サーファクテンの体内分布を検討した(実験2)。これらの実験は、福井大学動物実験委員会の承認の下、福井大学松岡キャンパス共同利用施設放射線障害予防規程に則って行われた。125I標識サーファクテンは、ウサギ羊水ならびにウサギ血清中において、95%が24時間後も安定性を保ち、75%が48時間後にも安定性を保っていた(実験1)。また、ウサギ羊水腔に投与された125I標識サーファクテンは、全ての胎仔の全ての臓器に分布した。中でも、胃、胃液、腸管への集積率が高かった(実験2)。報告者はこれまで、サーファクテンミセル溶液(肺サーファクタントと胎脂の混合物)による腸管への保護作用に着目し、研究を進めてきた。出生直後の新生児の消化管に高濃度の肺サーファクタントが存在することは、新生児の発達過程を考える上で非常に興味深い。本研究を更に発展させることにより、羊水中に存在する肺サーファクタントと胎脂の生物学的役割が明らかになることを期待している。
2: おおむね順調に進展している
福井大学高エネルギー医学研究センターの協力のもと、順調に動物実験を実施している。
これまでの研究成果を踏まえた上で、サーファクテンミセル溶液の臨床応用に向けて、動物実験を継続し発展させる。
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