研究課題/領域番号 |
17K11225
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
平田 修司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00228785)
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研究分担者 |
深澤 宏子 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60362068)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 産婦人科臨床教育 / 反転授業 / アクティブラーニング |
研究実績の概要 |
本学では、7 年前より医学生の“産科への興味の醸成”を目的に、医学科 5 年生の希望者に産科救命救急の対応プログラムである ALSO (Advanced Life Support in Obstetrics) コースの受講を目的とした課外教育を行ってきた。課外教育という性質上、時間的制約があるため、4 年前からこの課外授業において反転授業の手法を導入したところ、効率的に授業が進められた。そこで今回、産婦人科の正規教育において反転授業の導入を試みた。 医学科 4 年生の産婦人科が担当するすべての講義に反転授業を導入した。講義内容の必要な部分を中心に予習用の 10~15 分の解説音声付きスライドファイルを作成し、講義前に当該学年の学生が Web 上で閲覧できるようにした。学生には、携帯端末もしくはコンピュータで予めこのファイルを閲覧し指示された予習を行うことを求め、その予習状況について各講義の冒頭で小テストを行って確認することとした。さらに、コース終了時に反転授業に関してのアンケートを実施した。その結果、1 コマの講義に対する予習に要した時間は平均 10 分~ 30 分と答えた学生が多く、標準的には予習として、1 回か 2 回程度は予習用の教材を学習してくると考えられた。また、小テストは学習を進める上で効果的であったとする学生が多かった。 課外教育とは異なり、積極的に講義へ参加する学生ばかりではない正規教育においても、反転授業は有効に機能しうると考えられた。しかしながら、「講義の一部を前だしする」のみの反転授業の教育効果は限定的であったので、講義の内容と連携した反転教材の作成が必要であると考えられた。平成 30 年度には産婦人科の反転授業のあり方についてはさらに検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は医学部における産婦人科の教育 (系統講義) に反転授業を導入することにより、これまでの教育効果を向上できる可能性があるものと考え、それを実証する目的で着手したものである。まずは研究の初年度である平成 29 年度には、研究代表者の所属する大学における産婦人科のすべての講義に反転授業を導入し、その効果や問題点を学生のアンケートや教育担当者からの聞き取りによって判断することを予定していた。それに対し、実際に、婦人科では 19 時限分、また、産科では 24 時限分の反転授業教材を講義担当者 (延べ 12 名) が作成し、講義前に学生に公開した。さらに、学生の反転授業の学習状況の確認の目的で、すべての講義の冒頭に、反転教材で扱った内容の知識を小テストにて確認した。 以上の結果、小テストの成績から判断して、80 ~ 90 % の学生が反転学習をしてから講義に出席しているものと考えられた。また、学生へのアンケートの結果からは、反転授業と小テストを採り入れた講義に、概ね 80 % 程度の学生が効果があると判断し、自由記載においても肯定的な意見が多くを占めた。 以上のように、当初の予定どおりに本研究は進捗している。しかしながら、概要欄にも記載したとおり、「講義の一部を前だしする」のみの反転授業の教育効果は限定的であり、今後、講義の内容を再構成し、それと連携した反転教材の作成が必要であると考えられたので、平成 30 年度以降も研究を継続して実施する。
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今後の研究の推進方策 |
平成 29 年度の研究を通して、反転授業は産婦人科の講義の教育効果の向上には有用であることが明らかになったが、前述のとおり、反転授業の方法論をさらに検討する必要があると思われた。具体的には、(1)実際の講義の構成を、反転授業があることを前提としたものにすること、(2)その新しい構成の講義に対して、何を反転授業で扱うことがもっとも有効であるかを検討すること、(3)現在はパワーポイントのファイルに講義担当者が直接音声を入力することによって反転授業教材を作成しているが、視聴のしやすさには個人差があり、できる限り全反転教材を視聴しやすいものにすべきこと、(4)そのために、音声入力を外部に依頼することを検討すべきこと、(5)小テストの実施や評価について、学生がより反転授業の学習をする意欲が湧くようなものに工夫すべきこと、等々の課題である。 平成 30 年度も、引き続き、産婦人科のすべての講義に反転授業を導入するが、その際、これらの課題を検討し解決する方向性を持って実施し、その教育効果を判定し、以上の課題の解決方法を模索しようと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成 29 年度は、反転教材の作成のための費用のうち、一部の教材については音声入力を外部委託することを計画していた。しかしながら、まず最初は、講義担当者自身が音声入力することにより、どのような教材が作成できるのかを確認する必要があると考え、音声入力の外部委託は、実際に作成した教材を運用した結果、必要があれば平成 30 年度に行うこととした。 平成 29 年度の研究の結果、一部の教材については音声入力を外部委託することが望ましいと考えられたので、「次年度使用額」を用いてその作業を行うことを計画している。
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