わが国の高等教育にアクティブ・ラーニング (AL) が導入されつつある。臨床医学教育においても AL の手法が用いられてきたが、AL の手法の一つであるフリップト・ラーニング (反転授業、FL) を臨床医学の「座学の講義教育」に導入した報告はほとんどみられていなかった。 本研究は、医学部における産科教育に FL を導入して、その効果を測定し、FL の導入が、臨床医学領域の教育効果をどのように改善するのかを検討することを目的として立案した。 平成 29 年度から平成 31 年度まで、研究代表者の大学における 4 年生対象の産科の講義の 22 単元について、FL 教材の新規開発ならびに改訂を行った。平成 30 年度以降には、開発した FL 教材を、産科の講義に導入した。各単元の FL 教材についての視聴回数、わかりやすさ、問題点、ならびに学生にとっての「労力対効果」比について、受講した学生に対してアンケート調査を行った。さらに、平成 30 年度からは、平成 31 年度には、それまでの 2 年間の研究から得たノウハウを駆使して、婦人科の講義に用いる FL 教材の開発し、それを運用し同様の解析を行った。 以上の結果、産婦人科の講義教育への FL の導入によって、多くの場合、教育効率は向上し、受講生が獲得する知識の水準と量を確実に向上・拡大することができるものと考えられた。しかしながら一方、FL を導入しても、その講義の計画の策定ならびにそれに基づいて作成する FL の内容の検討が十分ではないために FL が十分には機能しない場合や、FL を事前学修しない受講生が少数ではあるものの存在しており、そうした受講生には FL は機能しない、などの解決すべき問題点が明らかになった。 現在、これらの諸問題の解決策の検討を継続している。
|