研究課題/領域番号 |
17K11226
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
杉村 基 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30273189)
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研究分担者 |
鳴本 敬一郎 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (90647603)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 絨毛細胞 / ヘパリンヘパラン硫酸 / 妊娠高血圧 / リモデリング |
研究実績の概要 |
我々は絨毛外絨毛細胞(extravellous trophoblast:EVT)の不死化細胞株TCL-1ではヘパリン/ヘパラン硫酸自体がCD44v3を介してPAK1リン酸化を誘導、遊走を促進することを示した(Suga N, Sugimura M et al. Biol Reprod. 2012)。一方、不死化EVT細胞株HTR8/SVneo細胞では反対にPAK1リン酸化と遊走が抑制されることを見出した。このことはEVT細胞側に存在するヘパリン/ヘパラン硫酸に対する受容体の多様性により遊走能が制御調節されている可能性を示すものである。 こうした現象は妊娠初期におけるEVTのその後の脱落膜細胞をはじめとする母体由来細胞群との接触、胎盤血管床のリモデリング機構において最も初期の過程に関与しており、リモデリング不全がその後の妊娠高血圧(HDP)発症機構に関連することを示唆する。 HDPでは胎盤増殖因子(Placental growth factor:PlGF)の低下が示されてきているが、絨毛細胞の遊走浸潤に関して、上記検討の一部として1)ヘパリン結合ドメインを有するPLGF2存在下(最終濃度10―100ng/ml)で、HTR-8/SV neo細胞は遊走能が有意に促進されたが、PLGF1では認められなかった。2)PLGF2存在下で、浸潤能が有意に促進された。3) PLGF2存在下でPAK-1リン酸化が有意に促進された。上記3点を見出した。このことからも胎盤血管床のリモデリング機構にPlGFとヘパリンが一部関与していることを示した。 へパリン結合部位を有するPLGF2はその受容体を介し、絨毛細胞周囲微小環境において胎児絨毛細胞の遊走浸潤能を促進している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDPでは母体血中の胎盤増殖因子(Placental growth factor:PlGF)の低下が示されてきている。研究実績の概要に示したように、絨毛細胞の遊走浸潤に関して、1)ヘパリン結合ドメインを有するPLGF2存在下(最終濃度10―100ng/ml)で、HTR-8/SV neo細胞は遊走能が有意に促進されたが、PLGF1では認められなかった。2)PLGF2存在下で、浸潤能が有意に促進された。3) PLGF2存在下でPAK-1リン酸化が有意に促進された。上記3点を見出した。このことからも胎盤血管床のリモデリング機構にPlGF2とヘパリンが一部関与していることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
上記観察に基づき、現在、不死化EVT細胞株において機械的細胞障害の存在下で1)PlGFのたんぱく発現の変化2)PlGF1,2のmRNA発現の変化を検討している。さらにPlGF2のSiRNAによるノックダウンによりEVTの遊走浸潤が調節されるかの検討を行う予定である。 PlGF1,2発見当時はPlGF2およびヘパリン/ヘパラン硫酸との同時投与による細胞遊走、浸潤能が検討され、遊走浸潤には関与しないと報告されているが、用いた細胞の特性による否定的結果となった可能性がある。妊娠初期の胎盤血管床のリモデリング機構のみならず、妊娠中期の細胞障害とその修復にPlGF2がEVT細胞側に存在するヘパリン/ヘパラン硫酸が関与している可能性がありPlGF2の外的投与がHDPの改善につながる可能性があるため、検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験の計画上、予算の使用計画を考慮した結果。
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