研究実績の概要 |
胎内炎症曝露により自閉症スペクトラム様所見を呈したモデルをMIA(maternal immune activation)モデルとして解析してきた。また、このMIAモデルに出生前に分子状水素投与した群(H2投与群)では、自閉症スペクトラム様所見が改善していることはすでに確認している。今年度は、これらの病態および改善したメカニズムを解明するために、エピジェネテイクスな観点から解析を行った。MIAモデル群、H2投与群およびコントロール群の3群について、受傷直後(8時間後)および5週齢において、仔脳組織を回収し、各種ヒストン修飾について検討した。その結果、受傷直後における評価では、MIAモデルにおいてH3K9アセチル化の亢進を認めたのに対し、ヒストンのメチル化修飾であるH3K4me3,H3K27me1,H3K27me2, H3K27me3は有意な変化は観察されなかった。また、H2投与群においては受傷直後(8時間後)において、H3K9アセチル化はコントロール群と同じレベルにまで低下していた。このことから、MIAモデルの仔脳組織ではH3K9アセチル化が亢進しており、これが出生前に分子状水素投与により軽減したことから、MIAモデルで自閉症スペクトラム様所見を呈するのに脳組織におけるH3K9アセチル化の亢進が関与しており、これの抑制が所見の改善と関連している可能性が示唆された。なお5週齢で同様の検討を行ったところ、同様の傾向は認めたものの、有意差は認められず、エピジェネテイックな変化は週齢により一部消失していくことが示唆された。
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