研究課題/領域番号 |
17K11234
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
出口 雅士 神戸大学, 大学院医学研究科, 特命教授 (50403291)
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研究分担者 |
山田 秀人 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40220397)
森實 真由美 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50514692)
谷村 憲司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80593988)
蝦名 康彦 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90322809)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不育症 / 染色体正常流産 / 脱落膜 / 末梢血 / マクロファージ / NK細胞 / 制御性B細胞 |
研究実績の概要 |
1) 脱落膜を用いた前向き研究においては、絨毛染色体正常例 18例および異常例 26例の子宮脱落膜、人工妊娠中絶で得られた脱落膜15例、内膜日付診で得られた子宮内膜19例を集積し、タイプ1マクロファージ(M1)とタイプ2マクロファージ(M2)の分極についてフローサイトメトリーで解析した。CD68陽性、HLA-DR陽性、 CD163陰性で定義されるM1は、非妊娠時黄体中期子宮内膜(中央値、四分位33.8、22.6-55.4%)に比して妊娠時の脱落膜では減少していた。しかし、染色体正常流産脱落膜(22.2 、17.1-31.8%)では、染色体異常流産脱落膜(16.1 、13.8-20.5%)人工妊娠中絶脱落膜(15.3、11.6-24.2%)に比して多かった。一方、CD68陽性、HLA-DR陰性、 CD163陽性で定義される、M2は染色体異常流産脱落膜(1.9、1.0-3.0%)人工妊娠中絶脱落膜(6.0、3.8-9.3%)では非妊娠時子宮内膜(1.0、0.4-1.5%)に比して増加していたが、染色体正常流産脱落膜(1.6、1.2-2.5%)では、増加しなかった。以上より染色体正常流産脱落膜ではM1が増加する一方、M2の増加がみられなかった。これらの知見は染色体正常流産での母児接点における免疫異常について、M1/M2マクロファージの関連を始めて報告したものである。 2) 末梢血を用いた前向き研究でも文書での同意を得て対象患者と陰性対照より末梢血採血を行い、単核白血球(PBMC)の分離を行ったうえでフローサイトメトリーでCD44陽性NK細胞、CD69+活性化NK細胞、CD94等の抑制性受容体発現NK細胞、制御性B細胞の 発現頻度の分析をすすめている。こちらについては、現在症例を集積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 脱落膜を用いた前向き研究においては、順調に症例を集積と解析が進んでおり、既にマクロファージに関する解析は終了した、現在は制御性B細胞について解析中であり、順次、CD44陽性NK細胞、CD69+活性化NK細胞、CD94 等の抑制性受容体発現NK細胞についても解析予定である。 2) 末梢血を用いた前向き研究については、当初は院内でヒト末梢血からの単核白血球(PBMC)の分離まで行ったうえで、研究協力先に検体を輸送してフローサイトメトリー等を実施する予定であったが、使用予定であった遠沈器ではきれいに分離できないことが判明し、採血直後の検体を共同研究先に移送して処理を行うこととなった。また細胞障害活性の測定にはあらかじめ凍結細胞を解凍して一定の細胞数まで増やす必要があり、検体の処理、輸送方法の研究協力先との調整に時間を要したが、既に症例の集積と解析を開始できており、院内の研究協力者を増員して症例の集積を進めていくことで、予定通りの症例の集積を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1) 脱落膜を用いた前向き研究においては、これまで通り症例の集積を進め、順次、制御性B細胞、CD44陽性NK細胞、CD69+活性化NK細胞、CD94 等の抑制性受容体発現NK細胞についても解析を行う。 2) 末梢血を用いた前向き研究についても、院内の研究協力者を増員して症例の集積を進めていくことで、予定通りの症例の集積と解析を行っていく予定である。 3) マウス流産モデルを用いた研究については、1), 2)の結果をもとに解析をすすめる予定であり、引き続き実験準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
末梢血を用いた前向き研究について、研究協力先との検体の処理、輸送方法の調整に時間を要したため、抗体等の購入について予定より遅れが生じたため、次年度使用額が発生した。末梢血を用いた研究については、今年度、院内の研究協力者を増員して症例の集積を進めていくことで、2018年度末までに当初予定していた症例数の集積を行う予定であり、2018年度の研究経費が当初予定より増加すると見込まれるため、次年度使用額をこれに充当する。
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