研究課題
トロフォブラストの浸潤に関する研究1)トリプトファン代謝経路のうちキヌレニン経路の第一段階を触媒する酵素であるindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の母体-胎児境界部位での発現動態を解析し、その機能の解明を試みた。2)IDOには二つのアイソフォ-ムが同定されている(IDO-1、IDO-2)。この二つのアイソフォ-ムの母体-胎児境界部位における発現動態を免疫組織化学染色法により解析した。その結果、IDO-1は脱落膜の腺上皮、絨毛組織内の胎児の血管内皮およびマクロファ-ジに発現が認められた。IDO-2はシンシチオトロフォブラストに発現していた。IFN-γはIDO-1の遺伝子およびタンパクレベルでの発現を促進したが、このIFN-γの効果はIDO-1に特異的でIDO-2に対しては認められなかった。3)母体-胎児境界部位におけるIDOの二つのアイソフォ-ムの発現部位およびIFN-γへの反応性が異なることは、それぞれのアイソフォ-ムが正常妊娠御維持において特異的な役割を果たしていることが考えられる。すなわち、IDOの発現により局所でのトリプトファン濃度が低下し免疫細胞による拒絶反応を抑制したり、トロフォブラストの脱落膜組織および筋層内への浸潤が制御され、正常な胎盤形成が起こると考えられる。4)癒着胎盤の母体-胎児境界部位においては、脱落膜組織のIDO-1の発現が認められず、トロフォブラストの浸潤は子宮筋層内にまで及んでおり、このことが癒着胎盤の発症病態のひとつである可能性が示唆された。
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