研究課題/領域番号 |
17K11241
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 産科婦人科学 / 胎盤 / 間葉系幹細胞 / microRNA / RNA / preeclampsia |
研究実績の概要 |
H30年度は以下の研究を行った。1)胎盤由来MSCにおける胎盤特異的microRNAの標的遺伝子の同定:preeclampsiaと関連した母体血漿中エクソソームの胎盤特異的microRNAのmimicあるいはinhibitorをMSCに導入して、それらの標的遺伝子の同定を試みた。具体的には、胎盤特異的microRNA-mimicを導入して強発現したMSCで発現が低下する遺伝子、胎盤特異的microRNA-inhibitorを導入して発現抑制したMSCで発現が上昇する遺伝子をmRNAマイクロアレイ解析でスクリーニングした。今後、標的遺伝子についてデータベース検索した結果と一致したmRNA/microRNAについて、リアルタイムRT-PCR解析により胎盤組織由来MSCでの発現を確認する予定である。2)妊娠経過に伴う母体血漿中microRNA発現プロファイルの基準値を決定する:正常妊婦50例を対象として、妊娠12週前後、妊娠24週前後、妊娠37週前後および分娩後24時間の母体血漿中胎盤特異的microRNA循環量を定量解析し、妊娠経過に伴う基準値を設定した。preeclampsia例およびに妊娠週数をマッチさせた正常妊娠例について、本基準値をもとに病態評価を行い、preeclampsia例の多くが基準値を外れていることが確認された (Murakami Y et al. J Obstet Gynaecol Res. 2018;44:840-851. )。本知見は、トランスクリプトームからみた産科疾患の病態解明と診断に有用な情報をもたらすと期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度 の研究は、以下の2点について行われた。1)胎盤由来MSCにおける胎盤特異的microRNAの標的遺伝子の同定については、胎盤特異的microRNAのmimicあるいはinhibitorをMSCに導入して、それらの標的遺伝子の同定を試みた。今後、標的遺伝子についてデータベース検索した結果と一致したmRNA/microRNAについて、リアルタイムRT-PCR解析により胎盤組織由来MSCでの発現を確認する予定である。2)妊娠経過に伴う母体血漿中microRNA発現プロファイルの基準値を決定することについては、その臨床的有用性を確認し、その成果を査読のある英文誌に公表することが出来た。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である令和元年度は、以下の2点について研究を進める計画である。1)胎盤由来間葉系幹細胞(MSC)から分泌されたエクソソーム添加による絨毛細胞の増殖・分化、血管新生への影響を明らかにする。具体的には、胎盤由来MSCが分泌するエクソームを分離・回収し、エクソソーム添加による絨毛細胞の増殖能、浸潤能、遊走能を検討する。また、エクソソーム添加による血管形成・血管新生について検討する。2)母体血漿中エクソソームにおける発現プロファイルの疾患発症予知の分子マーカーとしての有用性を評価する。preeclampsiaおよびに妊娠週数をマッチさせた正常妊娠例について産科疾患を発症する前に採血した血漿中のエクソソーム内mRNA/miRNA発現量を定量する。両群間の発現量を比較解析して、産科疾患の発症と有意な相関を認める血漿中エクソソーム内mRNA/miRNAを産科疾患の発症を推定する分子マーカーとして同定するため、receiver operating characteristic (ROC) 解析を行う。胎児超音波所見と分子マーカーセットとの併用などによる将来的な産科疾患発症の推定や胎盤機能の評価への臨床応用の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はマイクロアレイ解析まで行うことが出来たが、microRNAの標的遺伝子を決定し、その定量解析を行うところまで到達することが出来なかった。令和元年度内にmicroRNAの標的遺伝子について、確認解析としてリアルタイムRT-PCR法を用いた定量解析を行うので次年度使用額はすべて使用される。
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