研究課題/領域番号 |
17K11244
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
北折 珠央 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (40444989)
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研究分担者 |
杉浦 真弓 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30264740)
尾崎 康彦 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50254280)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不育症 / 菌叢解析 / 頸管粘液 / 腟分泌物 / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
平成29年度における当研究では菌叢解析を進めるにあたって研究のシステム形成をメインに行い実際に不育症患者群40検体については菌叢解析を行うことができた。 まずは不育症と診断された患者に対して外来にてインフォームドコンセントを得て妊娠時、非妊時それぞれの腟分泌物液、頸管粘液採取を採取しその検体に関してDNA抽出を行った。腟分泌物液に比べて頸管粘液から得られるDNA量が明らかに少ない傾向にあった。またいずれのDNA量についてもこれまで多く行われてきた腸内細菌の菌叢解析などで報告されている糞便から抽出されたDNA量と比較してDNA量が少ないことが懸念されたが、京都大学霊長類研究所の早川卓志助教授の指導のもと、PCR法による遺伝子増幅を工夫し、検体の精製、調整を行うことで腟分泌物液や頸管粘液といった検体を用いても次世代シーケンサーを用いて菌叢解析を行うことができた。 今回の40検体の菌叢解析から得た結果として菌叢の構成については既報告と矛盾しない結果となり、腟分泌物液、頸管粘液を用いて今回の方法で順調に菌叢解析が行えたものとして考えている。腟分泌物液、頸管粘液それぞれの菌叢の構成について比較したがおおむね同じ構成となっており腟分泌物液、頸管粘液では菌叢の構成については大きく変わらないと考えられた。 当院では大学病院という特性から正常妊婦が少ないため、コントロール検体については名古屋市立西部医療センターで採取することとしている。平成29年度に名古屋市立西部医療センターでのコントロール検体採取について倫理委員会の承認を得られ検体採取を始めたため今後はコントロール検体についても同様に菌叢解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コントロール検体採取のための倫理委員会の承認や菌叢解析のシステム形成に時間を費やし進捗状況としてはやや遅れていると考えている。 患者群の検体については腟分泌物液、頸管粘液ともに150検体以上を採取できている。またそのほとんどがDNA抽出も完了しておりその中の40検体については菌叢解析も完了しているため患者群に関しては順調に進んでいると考えている。その一方でまだコントロール検体の採取については名古屋市立西部医療センターで行うことになっており倫理委員会の承認に時間がかかってしまい検体採取が始まったばかりであるため、まだコントロール検体については1検体もDNA抽出を行えないでいる。最終的には患者群、コントロール群それぞれ100検体以上の菌叢の構成を比較し不育症に特異な細菌群を特定することを目標にしており早急なコントロール群の検体採取、DNA抽出を進めなければならない。 また平成29年度では初めての次世代シーケンサーを用いた菌叢解析ということもありDNA抽出を行った検体を菌叢解析が行える状態へ調整する作業をすべて京都大学霊長類研究所にて行った。遠方であり慣れない環境で限られた時間の中で試行錯誤を繰り返すのには大変時間がかかった。特にもともと懸念されていた腟分泌物液、頸管粘液の少ないDNA量の検体を菌叢解析が行える量になるまで増幅させるシステムを作る作業には時間を費やした。結局、40検体の菌叢解析の結果が得られるまでに半年近くの時間を費やした。 初回の菌叢解析ということもあり立ち上げに苦戦したが現在はシステム形成を行うことができたため今後はスムーズに進行でき、遅れは取り戻せるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後については作業を進めることがまずは一番の重要事項と考える。初回の菌叢解析についてはDNA抽出を行った検体の調整をすべて京都大学霊長類研究所で行ってきたが、作業のノウハウを学び、システム形成を行うことができたことで名古屋市立大学内でも作業を進めることができるようになった。初回は半年近くもかかった作業ではあるが効率的に進めれば40検体の菌叢解析を1ヶ月ほどで行えるようになると計画している。 またコントロール検体についても徐々に検体が集まってくる予定のためそれぞれについてひとまずは100検体ずつ菌叢解析を行い、菌叢の構成を解析し不育症に特異的な菌の同定ができるよう計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は倫理申請や研究開始のための準備にかなりの時間を費やして試薬を使う実質的な研究の開始が遅れたため、試薬購入に費やした金額が少額となり、大部分の金額を翌年度繰越となった。しかし今後は実質的な研究が今までの遅れを取り戻す勢いで進む予定であるため、試薬購入費など物品費が初年度に使用しなかった分も含めて必要になる予定である。また研究がまとまれば学会発表などのための旅費も今後必要となる。
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