研究実績の概要 |
不育症とは流死産を反復して児を得られない疾患であり、その原因の中でも抗リン脂質抗体症候群(APS)は唯一治療しうるが出産率は70-80%に留まる。またAPS は若年性脳梗塞を起こす難治性 疾患でありながら現在では血栓予防しか対処方法がない。我々は世界で初めてゲノムワイド関連解析を行い、平成22年難治性疾患克服事業(杉浦班)により申請者らは APSのゲノムワイド関連解析GWASを行ない最終的に155 症例の検体を収集し、複数抗体強陽性の 115 例に絞り込むことでTSHRが関連遺伝子であることを見出し、imputation 解析によってC1DとHLA-DQB1*05:01も有意水準に到達した。さらにNGF, SYCP2L, HLA-DRA, GATA3, FRMD4A, PTPRO に有意水準に近いSNPが認められた。しかしAPS複数抗体強陽性の症例は低頻度であり、国内でのこれ以上の検体収集は困難であった。本研究では国際共同研究により8種類の候補遺伝子についてTaqMan PCR法を用いて症例対照研究を行い、APS関連遺伝子を同定することを目的とする。その結果、国際共同研究により国際的価値が高まるのみならず、今後この難治性疾患に対する分子標的治療を開発する可能性につながる波及効果があると期待する。研究方法概要は以下の通り。(1)国内外の共同研究施設から抗リン脂質抗体症候群患者の血液検体と臨床情報を収集。(2)患者群および正常群検体からの DNA 抽出する。(3)候補遺伝子 C1D, NGF, SYCP2L, HLA-DRA, GATA3, FRMD4A, PTPRO, HLA-DQB1 の 20SNP をTaqMan PCR 法によってタイピングを行う。(4)抗リン脂質抗体症候群との関連が認められた遺伝子について、免疫染色法などによって子宮脱落膜における蛋白発現を確認。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
候補遺伝子TSHR, C1D, NGF, SYCP2L, HLA-DRA, GATA3, FRMD4A, PTPROについて、日本人のreplication研究を行うために、北海道大学免疫代謝内科学 渥美達也教授、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター 村島温子部長、 ふじたクリニック 藤田富雄院長、大阪医科大学産婦人科 藤田太輔講師、金沢大学病態検査学 森下英理子教授、順天堂大学浦安病院膠原病・リウマチ内科 森本真司准教授らの協力により、各施設の倫理委員会の承認を得て、現在20検体収集した。海外の施設とは国際共同研究の契約、倫理委員会など実施が遅れており、検体収集に至っていない。
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