研究実績の概要 |
抗リン脂質抗体症候群APSは抗凝固療法を行っても出生率は70-80%に留まり、若年性脳梗塞を起こす難治性疾患である。我々は世界で初めてゲノムワイド関連解析を行い、候補遺伝子TSHR, C1D, NGF, SYCP2L, HLA-DRA, GATA3, FRMD4A, PTPROを見出した(Sugira-Ogasawara et al. J Hum Genet 2017)。しかし、抗体価の高いAPSは稀であるため、確定ができなかった。本研究では日本人とcaucasianのAPS患者についてreplication studyを行いAPS関連遺伝子を同定する。現在、日本人の検体を26検体収集した。2018年6月国際不育症学会、7月欧州生殖医学会、2019年3月日本不育症学会において共同研究の打ち合わせをし、各施設の倫理委員会での申請を行っている。 APSに対するダナパロイドの有効性を証明した(Yoshihara et al. Modern Rheum 2019)。ダナパロイドは標準治療で用いる未分画ヘパリンと比較して出血、ヘパリン惹起性血小板減少症HIT、骨粗鬆症の副作用が少ないが、APSにおける有効性は報告がない。産科APS患者60人の91妊娠を対象として、ダナパロイドと低用量アスピリン、未分画ヘパリン(UFH)とLDAおよびLDAまたはプレドニゾロンで治療された患者の間で、出生率、妊娠合併症を比較した。絨毛染色体異常11例、生化学妊娠1例、異所性妊娠1例を除外した後、出生率はダナパロイド群で87.5%(14/16)、UFH群で90.0%(36/40)、LDA群で63.6%(14/22)であった。ダナパロイド群とUFH群の出生率は同等であり、LDA群よりも高い傾向があった。UFH群のうち、1例はHITを、1例は腰椎圧迫骨折を発症した。ダナパロイド群ではそれらを認めなかった。
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