研究実績の概要 |
抗リン脂質抗体症候群APSは抗凝固療法を行っても出生率は70-80%に留まり、若年性脳梗塞を起こす難治性疾患である。我々はゲノムワイド関連解析を行い、候補遺伝子TSHR, C1D, NGF, SYCP2L, HLA-DRA, GATA3, FRMD4A, PTPROを見出した。本研究では日本人とcaucasianのAPS関連遺伝子を同定する。日本人の検体を26検体収集した。海外の共同研究者については、各施設の倫理委員会での申請を行っている。 ダナパロイドはAPSの標準治療で用いる未分画ヘパリンと比較して出血、ヘパリン惹起性血小板減少症HIT、骨粗鬆症の副作用が少ないが、有効性は報告がない。産科APS患者60人の91妊娠を対象として、ダナパロイドの有用性を調べた。ダナパロイド群とUFH群の出生率は同等であり、LDA群よりも高い傾向があった。UFH群のうち、1例はHITを、1例は腰椎圧迫骨折を発症した。ダナパロイドはAPS患者に安全に使用できることが確認できた。 流産の70~80%は胎児染色体異数性に起因するが、患者が流産の知識を全く持っていないことを日常診療で経験する。日本人の流産の認識を明らかにすることを目的とし、愛知県民5000人に調査票を郵送し、1219人で解析を行った。流産の原因を「染色体異常などの遺伝学的要因」と正答したのは62%であり、「長期にわたるストレス」、 「ストレスフルな出来事」、「重いものを持つ」を誤答したのは 75%、65%、49%であり、性別、年齢、流産経験、学歴が有意に正解率や誤答率に関与していた。65%が流産の頻度を実際の15%より低いと回答した。流産経験者では流産を罪に感じ、防ぐことができたと思う者がいた。日本人の流産の知識が乏しく、啓発が必要と思われた。これらの成果は読売新聞、朝日新聞に報道された。
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