研究実績の概要 |
本研究では、1) 妊娠10~13週の血清HSD17B1低下はその後のPE発症を予知するか、2) 妊娠10~13週の血漿Gal-1低下はその後のPE発症を予知するか、3) 母体因子(PE既往など)、妊娠初期の血圧レベル、妊娠10~13週のHSD17B1、Gal-1、PP-13、及びPlGFの組み合わせは、偽陽性率10%未満で、かつ陰性的中率99.5%以上の早発型PE予知モデルを開発できるか、4) 同組み合わせは、偽陽性率10%未満で、かつ感度80%以上の全PE予知モデルを開発できるか、を検討する。 1) について、本年度は、市販されたHSD17B1のELISAキット(Biomatik社)について、保存されていた妊婦の血漿80例を用いて予備実験を行った。しかし、測定限界未満の症例が多く、このキットではHSD17B1の測定は難しいと判断した。 平成30年度以降、2) ~ 4) を実施するために、2016年6月~2018年3月にかけて、妊娠初期の血清、血漿を420例分‐80℃で保存した。本年度より、妊婦健診の11~13週において、全妊婦を対象に子宮動脈血流速度波形血流速度波形のpulsatility index(PI)測定を開始した。これにより、妊娠初期における早発型PE予知モデルにおいて、母体因子(PE既往など)、妊娠初期の血圧レベルに加え、子宮動脈血流速度波形のPI値が加わることになった。その結果、最悪、予定していたすべてのキット(HSD17B1, PP-13, Gal-1)の測定が不可能になった場合であっても、少なくともPlGFに関してはRoche Diagnostics社のElecsysを用いて計測できることがすでに確認ずみであることから、最低限の目標レベルである、疑陽性率10%、感度80%の予知精度は確保できる見通しがついた。
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