研究課題/領域番号 |
17K11251
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
日原 華子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80626458)
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研究分担者 |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (10209702)
内田 浩 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90286534)
升田 博隆 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80317198)
内田 明花 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60445236)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 着床 / 子宮内膜上皮細胞 / 遠心性運動 / 求心性運動 / Hippo pathway |
研究実績の概要 |
ヒト着床において、子宮内膜は胚の陥入を許すためにダイナミックに変化を起こす。これまでのヒト着床研究によって胚直下の子宮内膜上皮細胞層は細胞死に陥ることで胚の通過ルートを形成するとされてきた。一方で我々のグループによる解析からは、細胞死以外に子宮内膜上皮細胞の(胚を回避し胚を避けるような)遠心性細胞運動が起こることが明らかになっている。 しかし、飽和状態になっている子宮内膜上皮細胞層において、過密状態である遠心性方向へ一見無理な方向への運動は、一見不合理な細胞運動である。一般的な培養細胞におけるcontact inhibitionのルールを逸脱しているため、細胞体のサイズコントロールによって contact inhibitionを調整しているHippo pathwayにある種の変化が見られると想定される。子宮内膜上皮細胞層の再構築が破壊とは逆方向の求心性運動と細胞増殖の複合的機序によるものという仮説の下、解析を実施している。 in vitro着床アッセイを用いたこれまでの解析においては、主要な Hippo pathway 構成因子の発現量変化やリン酸化の変化に合理的な説明が可能な明快な傾向が見いだせていない。ヒト着床を子宮内膜上皮層と胚との関係でみた場合、接触接着以降、陥入侵入へと変化していく。このステップを包括的に解析していたため有意差が得られていないと考え、現在Hippo pathway の解析を一時留保し、in vitro着床アッセイにおける子宮内膜上皮細胞の経時的な細胞運動の速度と、細胞体の伸展面積の変化に着目して胚モデルの侵入陥入をmimicする伸展面積の総量との比較によって、ヒト着床の進行における細胞運動と細胞接着の関連におけるphaseごとの細胞動態解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
子宮内膜上皮細胞体サイズを規定していると考えられる Hippo signalであるが、当初仮説として設定したヒト着床において子宮内膜上皮細胞が一見不合理な遠心的運動を行うことの背景基盤を支えるものがHippo pathwayの主要因子の発現挙動、リン酸化に一定の傾向が得られずにおり、仮説の再検討から上記研究実績の概要にあるような計画変更を行っている。 また昨年度計画設定した、細胞培養系に厚みを創出するための子宮内膜上皮層の下にマトリゲル、寒天ゲルなどの厚みを作成したうえで、胚モデルが進展ではなく、「陥入する」 新しいin vitro 着床アッセイ系の確立が難航している(一層の上皮層の作成の前に子宮内膜上皮細胞モデルであるIshikawa自身がマトリゲルなどに陥入していってしまう)ことも当初計画から遅れている一因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro着床アッセイを用いたこれまでの解析においては、主要な Hippo pathway 構成因子の発現量変化やリン酸化の変化に合理的な説明が可能な明快な傾向が見いだせておらず、3D invito着床アッセイ系(マトリゲル、寒天ゲル上に子宮内膜上層を作成し、着床をin vitroに再現する系)の確立ができていないため、下記へ方針変更する。 すなわち real time video recording によるin vitroty着床アッセイ解析観察における子宮内膜上皮細胞の経時的な細胞運動の速度と、細胞体の伸展面積の変化に着目して胚モデルの侵入陥入をmimicする伸展面積の総量との比較によって、ヒト着床の進行における細胞運動と細胞接着の関連におけるphaseごとの細胞動態解析を実施している。 そのphase解析から特徴的な細胞運動のよりactiveなphaseに焦点をあて、実験系条件の見直しを行い、再度 Hippo pathwayの主要因子タンパク質の発現量変化、リン酸化変化を解析する。それらの解析に加え(変化を見いだせない事態に備え)、タンパク質の発現量変化をmassiveな培養細胞総量における変化ではなく、顕微鏡観察を利用した着床局所での変化にも焦点をあてて検討する。 また、胚陥入により損傷して子宮内膜上皮細胞層の再構築に寄与すると想定される求心性運動と細胞増殖との関与についての解析を同時に実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。適宜必要な消耗品等に充てていく。
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