研究課題
早産の主要な原因として絨毛膜羊膜炎(CAM: chorioamnionitis)は重要な所見である。しかしながら近年このCAMを有しない多くの流早産症例が指摘されている。これら症例は無菌性炎症に起因する可能性があるものの現時点では原因不明に分類せざるを得ない。本研究では感染を伴わないマウス流産モデルを用いて、そのメカニズムと予防法を自然免疫を中心とした観点から研究を行っている。これまで申請者らは、妊娠マウスに糖脂質であるα-GC(α-galactosylceramide)を投与し無菌的に流産を誘導、このメカニズム解析を行っており、そこでは自然免疫細胞である樹状細胞、iNKT細胞の異常活性化が原因である事を見出しでいる。そこでこの流産を防止する因子として、ダイズ由来の天然グルコシルセラミドの投与実験を行ったところ、流産防止効果はなく逆にα-GCに誘導される流産をさらに増悪させる結果となった。しかしながらグルコシルセラミド単体では流産は誘導されない。これは、グルコシルセラミドによって樹状細胞のimmuno stimulatory activityの亢進は起こるものの、糖鎖部分がiNKT細胞に認識され得ないためだと思われる。すなわち臨床における切迫流早産の治療中には、グルコシルセラミドなどの糖脂質摂取は避けた方が好ましいことが示唆された。次に臨床でも使用されているプロゲステロン(P4)の投与を行ったところ、その前投与はα-GC誘導性流産を防止する所見を得た。後投与では流産は予防できない。P4の前投与により樹状細胞のimmuno stimulatory activityが抑制され、iNKT細胞の活性も抑制されているメカニズムが解明され、P4の新たな作用点発見とともに切迫流早産治療におけるP4予防投与の重要性が示唆された(論文準備中)。
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Immunobiology
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