これまで本研究資金を用い、カニクイザルを購入し、子宮動脈塞栓術の有用性と安全性を検証してきた。本技術は産科危機的出血などの治療のために重要な医療技術であり、我々は本技術における安全性や子宮機能回復に焦点を当てた研究を行ってきた。昨年度までの研究において、永久塞栓物質である、シアノアクリレート系薬剤(n-butyl-2- cyanoacrylate)を用いてカニクイザルの片側子宮動脈を塞栓し、組織学的検査及び電子顕微鏡にて調査を行ったところ、塞栓した子宮動脈の末梢において動脈が再開通しており、塞栓された動脈が栄養する範囲の組織が壊死に陥っていない像を確認することができ、本法の安全性を示した。さらに、両側の子宮動脈を塞栓した場合にも同様に再開通を認めたことから、安全性をさらに確実に実証した。本研究の最終エンドポイントを妊娠および出産の安全性において研究を進めたところ、整調な月経周期ならびに卵巣機能の保持に関しては確証を得られたが、サルにおける体外受精胚移植の技術が確立されていないことから、年間の一時期にしか訪れない発情期を待ってメイティングのうえ妊娠させるしか方法がなく、研究期間内において妊娠例を得るに至らなかった。今後、妊娠例を得られるようにメイティングを進めてゆく予定ではあるが、妊娠に至らない場合にも評価が可能なようにエンドポイントを再設定してゆく必要性があると考えられる。本研究費を用いた研究結果に関しては、論文執筆中である。
|