研究課題/領域番号 |
17K11258
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
東海林 博樹 金沢医科大学, 一般教育機構, 教授 (10263873)
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研究分担者 |
有川 智博 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (70452670)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胎盤 / ガレクチン / 栄養膜細胞 / 浸潤能 |
研究実績の概要 |
本研究では、胎盤栄養膜細胞をモデルとして、細胞の浸潤能獲得におけるガレクチンファミリーの機能解明を目指している。これまでに我々は、ガレクチン4が負の制御に関わること等を報告してきた。今年度は、正の制御に関わる可能性があるガレクチン9について解析を行った。ガレクチン9に関してはこれまでに、ラット胎盤由来Rcho-1細胞の浸潤性細胞への分化に伴って発現が上昇傾向にあることや、ヒト胎盤由来JEG3細胞が組換えガレクチン9添加により形態変化(突起形成)を起こすことを観察していた。今回、後者のJEG3細胞への組換えガレクチン9作用についてさらに解析を進めた。その結果、形態変化は一過的な反応であることや、形態変化を誘導するやや高濃度(1μM程度)のガレクチン9添加では、細胞死も誘導されるらしいことが示された。これらの結果から、当初予想していた「ガレクチン9が上皮ー間葉転換(EMT: epithelial-mesenchymal transition)を誘導する」という可能性は低いものと考えられた。一方で、我々はラット胎盤由来Rcho-1細胞の浸潤性細胞への分化にはオートファジー発動が重要との報告をしている。現在ガレクチン9が、栄養膜細胞分化に際し、オートファジー惹起に促進的に作用する可能性について解析を進めている。さらに、ガレクチン9は肺上皮細胞株に対してEMT様の反応を惹起する可能性も見いだしており、この点についても合わせて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の仮説「ガレクチン9が胎盤栄養膜細胞の上皮ー間葉転換(EMT: epithelial-mesenchymal transition)を誘導する」については、否定的な結果が得られている。このため新たな仮説「ガレクチン9は胎盤栄養膜細胞の分化に際しオートファジー誘導に関与する」の検証に入る必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ガレクチン9の作用について、胎盤栄養膜細胞の分化に際しオートファジー誘導に関与する可能性、ならびに肺上皮細胞株に対してEMT様の反応を惹起する可能性を中心に解析していく。 (2)現在我々が中心的に解析しているガレクチン4と9以外のガレクチン作用の解析も進める。具体的には、ヒト胎盤由来HTR8/SV40で発現し、浸潤能獲得に関与する可能性の高いガレクチン1、3,8の作用機序に注目していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度は研究室全体での研究資金が比較的多く獲得できた。このため、各研究間で共通利用できる消耗品等の余剰分を相互の研究に分配することにより、無駄が省けて出費が抑えられた。また、免疫組織化学実験に関わる費用が予定よりも安価に抑えられた。これらにより余剰金が発生した。次年度はガレクチン発現解析や培養実験費用が予定よりもかさむ可能性が出てきたため、繰越金はここに充てる。
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