研究課題
本研究では胎盤栄養膜細胞と肺がん上皮細胞をモデルとして、浸潤性細胞への分化制御におけるガレクチンファミリーの機能解明を目指している。これまでに我々はガレクチン4が浸潤能獲得に関して負の制御に関わることを報告し、ガレクチン8や9が正の制御に関わる可能性について検討してきた。平成30年度にはガレクチン9がTGFβと協調して上皮ー間葉転換(EMT:epithelial-mesenchymal transition)を促進する可能性を見いだした。令和元年度~2年度は、HTR8/SV40細胞の遊走活性や分化制御に対するガレクチン8の作用について解析を進めた。細胞遊走能については、ガレクチン8をノックダウンしても有意な効果は認められなかった一方で、形態が絨毛外栄養膜細胞 (extravillous trophoblast:以下EVT)の特徴と一致する細胞が増える傾向が認められた。すなわちEVTと同様に、やや巨大化し抗サイトケラチン抗体および抗ビメンチン抗体の両方で染色される細胞が増加傾向となるのである。現在、CRISPR-Cas9システムによりガレクチン8ノックアウトHTR8/SV40細胞株を樹立し、有意差の有無も含めて、さらに詳しい解析を継続中である。ガレクチン8は、先行研究よりEMT促進など細胞の遊走能を高める作用を想定していたが、本研究ではそれとは逆に浸潤性細胞への分化に関して負の制御をしている可能性を示唆している。先行研究の結果と本研究の結果を総合すると、浸潤性細胞への分化制御において、ガレクチン1、3、9が促進的に、4と8が抑制的に作用する可能性が示された。
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