研究課題
本研究では、分割停止を起こした受精卵や廃棄予定の受精卵を用いて染色体解析を行い、生殖細胞系列で発生する染色体異常の傾向を調べ、配偶子形成過程や初期胚で発生する染色体異常の種類、染色体異常が受精卵の分割にどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的として実施している。胚盤胞期に胎児を形成するICMと胎盤を形成するTEとの染色体比較解析の結果、ICMとTEでは約半数で核型が異なる結果が得られ、不一致の原因は受精後の初期胚に発生した染色体異常で、TEに蓄積する傾向にあることがわかった。さらに詳細な解析を行うと、受精前の配偶子形成過程で染色体異常が発生した胚は、受精後の初期胚にも染色体異常を起こしやすい傾向にあることがわかった。これらのデータを論文に作成している。受精卵のような微量な細胞から染色体解析を実施する際に、欠失や重複などの微細な構造異常やモザイク異常などを最も感度や解像度良く検出する手法を探索した。方法は全ゲノム増幅して次世代シーケンサーで浅く全ゲノムシーケンスし、バイオフォマティクス解析で染色体コピー数を決定するが、全ゲノム増幅などのサンプル調整やシーケンス法を工夫し、比較解析した。その結果、30%程のモザイク異常からの検出が可能となり、5Mb程の欠失や重複などのコピー異常を検出可能であることが分かった。また、これまで解析した染色体解析のデータから、どの染色体にどのような種類の染色体異常が発生したか、生殖細胞系列で発生する染色体異常の傾向についてまとめている。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、胚盤胞期における胎児を形成するICMと胎盤を形成するTEとの染色体比較解析については、論文に必要なデータを揃え、現在は論文を作成している。また受精卵の染色体解析について、微細な構造異常を最も感度良く検出する手法を探索するため、種々の方法で比較解析実験を行った。これまで解析を行ったデータについて、染色体異常の傾向をまとめている。
今年度は最終年度ということもあり、集大成として昨年度中に完成させる事ができなかった、胚盤胞期における胎児を形成するICMと胎盤を形成するTEとの染色体比較解析の論文、さらには受精卵の染色体解析に最適な手法を探索するため、種々の手法を用いて比較解析を行った実験について論文にまとめる。また分割停止胚の染色体解析のデータから、どの染色体にどのような種類の染色体異常が発生したか、生殖細胞系列で発生する染色体異常の傾向についてまとめる。
(理由)人件費に計上した予算が浮いたため。(使用計画) 差引額については、試薬消耗品として使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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