研究課題
生殖医療において、着床率向上のために黄体ホルモン(プロゲスチン)補充療法が行われている。その標的組織である子宮内膜は、プロゲスチン作用により適切に分化(脱落膜化)して胚受容能を獲得している。脱落膜化の意義を明確するには、プロゲスチンに制御される標的遺伝子の同定とその機能解析が重要となる。国外の複数の研究グループから、実験動物においてHAND2(heart and neural crest derivatives expressed 2)が着床や脱落膜化に必要であることが報告されている。ヒト子宮内膜局所で転写因子HAND2が、ヒト子宮内膜の細胞レベルでどのように機能しているのかを解析した。患者の同意のもとに採取したヒト子宮内膜組織を、機械的および酵素的に融解して、ヒト子宮内膜間質細胞を分離培養した。HAND2を発現抑制した培養子宮内膜間質細胞にて分子生物学的機能解析を行うために、siRNAによりノックダウン(発現抑制)した細胞を作成した。子宮内膜機能調節に関わる血管新生因子としてVascular Endothelial Growth Factor (VEGF)、Angiopoietin(ANGPT)、Stromal cell-derived factor 1 (SDF-1/CXCL12)が、性ステロイドホルモンにより特異的に制御されていることを明らかにしてきた。そこで、これら血管新生因子(VEGF、ANGPT1、ANGPT2、SDF-1)への転写制御にHAND2が必要であるかを検討した。HAND2発現抑制細胞でANGPT-2発現が抑制されており、HAND2が血管新生に関与している知見が得られた
2: おおむね順調に進展している
ヒト子宮内膜でHAND2がどのように制御されているかを細胞・分子生物学的に検討し、そこに関連する因子を同定することを目的としている。siRNAを導入した細胞からRNAを抽出・精製し、ゲノムDNAの混入を防ぐためにDNase処理をしたRNAを用いてcDNAを作製してリアルタイムPCRを施行した。その成果として、siRNAがHAND2 mRNAの発現とその蛋白発現を抑制するのを確認した。短期間で急速に変化する子宮内膜は、生体内で最も顕著な血管新生の場となっている。着床現象の要となるのは血管新生であり、これを制御する血管新生因子の調節機構や役割を解明する必要がある。これまで子宮内膜機能に関与している血管新生因子が、性ステロイドホルモンにより特異的に制御されていることを明らかにしてきた。HAND2発現抑制細胞でANGPT-2発現が抑制されている新知見を得た。
HAND2を発現抑制した細胞にて分子生物学的機能解析を行う。着床ならびに妊娠維持に必須のプロゲスチンで誘導されるHAND2という新規転写因子が、ヒト子宮内膜の機能調節に寄与する分子メカニズムを解明にするため、培養子宮内膜間質細胞におけるHAND2の機能を明らかとする。HAND2発現抑制細胞で血管新生に関与する因子であるANGPT-2発現が抑制されているのを見出した。今後、他の血管新生因子として、Fibroblast growth factors(FGF)ファミリーについてHAND2の作用を調べる。
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