月経周期における性ホルモンの分泌量の変動が関節痛へとつながるメカニズムの解明を目指し、性ホルモンで刺激した培養滑膜線維芽細胞を月経周期の細胞モデルとして用いた。昨年度にひきつづき、この細胞モデルの培養上清に蓄積するヒアルロン酸の量とサイズの分析を行った。高分子量から低分子量までの全体のサイズ分布の他に、低分子量のヒアルロン酸オリゴ糖にも着目して、分析原理の異なるカラムを用いて高速液体クロマトグラフィーによる分析を行った。高速液体クロマトグラフィー分析には、ヒアルロン酸と特異的に結合するタンパク質を用いた検出方法、あるいは、ヒアルロン酸を含む糖鎖を蛍光標識することによる検出方法を組み合わせて、性ホルモンで刺激してからの時間、性ホルモンの濃度の効果を検証した。それらの実験の結果、ホルモンの種類によるヒアルロン酸量に変化はみられなかったが、サイズ分布に差異が観察された。本年度はまた、ヒアルロン酸のサイズ分布に変化を及ぼすと考えられるヒアルロン酸代謝に関与する分子の発現量の変化をリアルタイム定量的PCRにて調べた。その結果、ヒアルロン酸合成酵素およびヒアルロン酸の分解にはたらくいくつかの酵素やタンパク質の発現レベルが、性ホルモンの添加によって影響を受けることが示された。引き続き、詳細な解析を行っている。一方で、過年度に行った実験により明らかとなったヒアルロン酸の分解に関与する酵素の活性を阻害する糖鎖分子の構造について、英文誌に論文発表を行った。また、細胞外マトリックスタンパク質の分解活性を調節するタンパク質分子の糖鎖構造に関する論文発表も行った。
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