研究課題/領域番号 |
17K11265
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
島田 宗昭 東北大学, 大学病院, 准教授 (40362892)
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研究分担者 |
徳永 英樹 東北大学, 大学病院, 講師 (30595559)
北谷 和之 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (40539235) [辞退]
永井 智之 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00704298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 子宮頸癌 / 化学療法 / 集学的治療 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
研究代表者が行った、子宮頸部非扁平上皮癌IB2, IIA2, IIB期53例を対象とした術前化学療法の有効性および安全性を評価した第II相試験に付随した、組織亜型別のドセタキセル/カルボプラチン併用化学療法の感受性を検討した成績を論文化した。通常型内頸部腺癌(20例)に比して、粘液性胃型腺癌(13例)の化学療法奏効率は有意に低く(85.0% vs. 46.2%, p=0.048)、5年全生存期間も有意に不良であった(90.0% vs. 36.9%, p< 0.001)。 本研究課題に関連する、「子宮頸癌IB-IIB期に対する手術療法と化学療法との集学的治療戦略」の妥当性を検討するために、骨盤内リンパ節転移陽性子宮頸癌IB-IIB期1,074例を対象とした術後化学療法の有効性を放射線療法と後方視的に比較検討し、再発形式は異なるものの、ハイリスク子宮頸癌IB-IIB期に対する術後化学療法は放射線療法と同等の治療成績を示す可能性を報告した。さらに、再発中リスク子宮頸癌IB-IIB期555例を対象とし術後療法による治療成績について後方視的に検討し、術後化学療法が再発中リスク子宮頸癌に対する有用な治療戦略となる可能性を報告した。 本研究の遂行に必須である、クリニカルバイオバンク・クリニカルシーケンスの施設内体制整備をクリニカルバイオバンク部門長として担当し、2018年2月16日に「がんゲノム中核医療拠点病院」の承認を得た。高い品質管理の下、試料(手術検体)の集積、クリニカルシーケンスにより得られたゲノム情報と診療情報を統合解析する体制が整い、本研究を遂行する体制が整備された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
子宮頸癌IB-IIB期に対する標準的治療法は、手術療法(広汎子宮全摘出術)と根治的放射線療法であり、手術療法に関しては、術後再発リスクを評価して、再発中・高リスク症例に対しては術後放射線療法を追加する。しかしながら、局所療法である手術療法と根治的放射線療法を同一時期に施行する意義、費用対効果、術後合併症によるQOLの著しい低下、治療後の合併症に対する医療費、治療後のトータルヘルスケアなどを勘案し、子宮頸癌IB-IIB期に対する「手術療法と術前/術後化学療法との集学的治療」の有用性は検討されている。したがって、子宮頸癌に対する化学療法感受性は治療戦略立案上、最も重要な因子であり、がんゲノム医療の実装を目指す国家的プロジェクトが本格稼働した現況では、子宮頸癌において組織型別の化学療法感受性を検討する本研究課題は重要な意義を有する。 まず、「手術療法と術前/術後化学療法との集学的治療」の妥当性を多施設共同研究により検討し、2本の論文化を行った。さらに、臨床第II相試験の付随研究として、本研究課題である「子宮頸部胃型粘液性癌の化学療法低感受性」について論文発表を行った。3本の関連論文発表作成に時間を要した。 がんゲノム医療実装化に不可欠である、クリニカルバイオバンク・クリニカルシーケンスの院内体制整備にもかなりの時間を要した。加えて、臨床研究に関する個人情報(ゲノム情報を含む)の取扱い、臨床研究法施行に際し、本研究の実施計画書改訂、院内臨床研究倫理審査工程の改訂整備にも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、クリニカルバイオバンク・クリニカルシーケンスの院内体制整備は完了し、臨床研究法に基づく臨床研究実施計画書の審査体制整備も完了したことから、平成30年度、本研究課題の加速度的な遂行が可能となった。本研究課題の対象症例の特定も完了し、試験実施計画書に基づき、マイクロダイセクション作業を開始している。 東北大学病院と東北メディカルメガバンク機構は協働して「未来型医療創成センター」を立ち上げ、がんゲノム医療の臨床実装、次世代医療開発を目指す研究を展開しており、本研究課題におけるクリニカルシーケンスの工程に関しては、東北メディカルメガバンク機構の全面的支援をソフト・ハード両面において行うことが可能となった。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成30年度請求額と合わせ平成30年度の研究遂行に使用する予定である。
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