研究課題/領域番号 |
17K11269
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10466758)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / ABC現象 / PLD |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究目標:ヒトにおける代表的なPEGリポソーム製剤であるドキシルや、PEG-G-CSF製剤のジーラスタ等を用いた卵巣癌患者の余剰血清サンプルを用いて、ヒトにおけるABC現象の解明するために、①ELISAを用いた測定系でのヒトにおける抗PEG IgM抗体測定のカットオフ値の設定。(陽性コントロールサンプルとの吸光度比から)②採取済みの卵巣癌患者(およびコントロールとして他の婦人科癌患者等の血清サンプル)の抗PEG IgM抗体および血中ドキシル濃度の測定、治療効果や副作用の検討 を行うこと。 平成29年度の研究成果:①徳島大学大学院医歯薬学研究部薬物動態制御学分野石田研の協力を得て、抗PEG IgM抗体測定におけるカットオフ値を設定した。サンプル血清中のanti-PEG IgM量をナイーブ血清(anti-PEG IgMを多量に含む・購入品)を用いて補正 (ODssample/ODcontrol)することにより、カットオフ値を解析の都度に設定して定量化することができた。* ODsample: サンプル中に含まれるanti-PEG IgMを測定した際の吸光度(absorbance)、ODcontrol:ナイーブ血清中に含まれるanti-PEG IgMを測定した際の吸光度 ②卵巣癌患者17名を含む婦人科癌患者22名の血清サンプルを解析し、22名の婦人科癌患者の9名(45%)に、抗PEG IgM抗体が検出されることを発見した。また、17名の卵巣癌患者はドキシルによる治療を行っているが、そのうち5名は抗IgM抗体陽性の患者であった。5例の計11サイクル投与の前後における抗体濃度を測定すると、治療前は検出されていた抗体が、治療翌日の血清からはカットオフ値未満(陰性)となっており、ドキシル投与によって消費されていることが示された。これは、ABC現象の原因となる現象と同様である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人の血清サンプル(男女、20代~60代までを均等に合計200名分)の収集、解析に当初の予定より時間がかかっているため、次のステップである抗PEG抗体陽性とドキシル治療の副作用との関連についての検討を先に行うこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
抗PEG IgM抗体産生マウスに対するドキシルやその他のPEG化製剤のABC現象発現の有無について、リアルタイムイメージングなどを用いて解析を行う予定である。また、東京大学医学部附属病院女性外科にてPEG-G-CSFを使用した婦人科癌患者等、PEG化製剤を投与した患者の採血検査時残血清の一部を用いて抗PEG IgM抗体やドキシル濃度などの測定を行うため、患者の血清サンプルの収集、解析に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、PEG-G-CSFを使用した患者血清の採取および解析を行うため、試薬の購入を予定している。また、PEG化リポソームを投与して抗PEG IgM抗体産生を誘導したマウスを作成し、ドキシルおよびPEG-G-CSF等の複数種類のPEG化製剤を投与して、投与量や投与経路によってABC現象の発生の有無やその程度の違いを検証し、形状や投与経路の違いとABC現象との関連を解明する予定である。従って、マウスの購入、マウスのin vivo imagingに要する蛍光試薬などの購入を予定している。
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