研究課題
Doxil投与を受けた17症例のうち、5例において投与前から抗PEG IgM抗体が産生されていたが(0.3-1.4 ODR)、Doxil投与後に新規の抗PEG IgM抗体産生症例は認められなかった。抗体陽性例では、Doxil投与翌日の血中抗PEG IgM抗体が有意に減少しており(0.04-0.2 ODR, p=0.001)、抗体が消費されていた。抗体陽性群5例と陰性群12例の間で、Doxil投与翌日の血中ドキソルビシン濃度に有意差はなく(40mg/m2群: p=0.931, 50mg/m2群: p=0.107)、また治療効果 (病勢コントロール率)(40% vs 50%)やgrade 3/4の非血液毒性出現率(60% vs 42%)にも有意差は認めなかった。本研究により、PEG製剤投与前に抗PEG抗体保有者が存在すること、PEG製剤投与による抗PEG抗体が消費されること、PEG製剤投与後に抗PEG抗体産生が必ずしも誘導されないことが示された。薬剤投与量と抗体量の比は製剤ごとに異なることから、少量のPEG修飾薬剤を特徴とするPEG-G-CSF製剤や、PEG-インターフェロン製剤では、ABC現象が治療効果の減弱に結びつく可能性がある。また、PEG製剤の投与前に、カラのPEGリポソーム製剤などをプレメディケーション投与することにより血中の抗PEG抗体を回収することで、PEG製剤をより適切に投与できる可能性が示唆された。投与量の個別化や薬剤改良の観点から、抗PEG抗体のモニタリングの意義について更なる検討が望まれる。
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Cancer Science
巻: 110 ページ: 3068-3078
10.1111/cas.14174