研究課題/領域番号 |
17K11272
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
村上 節 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20240666)
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研究分担者 |
郭 翔志 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50464178)
木村 文則 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (90322148)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 卵巣毒性 / 抗癌剤 / mTOR阻害薬 |
研究実績の概要 |
7週齢のC57BL / 6Jマウスをコントロール群、シスプラチン投与群、mTOR阻害薬投与群、mTOR阻害薬及びシスプラチン併用投与群の4群に割り付け、シスプラチンは15日間連続腹腔内投与し、mTOR阻害薬を投与する群ではエベロリムスをシスプラチン投与前から投与後1週間まで投与した。エベロリムスの最終投与の翌日に卵巣を切除し組織学的に卵巣の各種卵胞数を計測し比較した。前年度の結果と合わせ、シスプラチン群はコントロール群より有意に複数種の卵胞数が少なく、mTOR阻害薬及びシスプラチン併用投与群はシスプラチン群より有意に複数種の卵胞数が多く、コントロール群とmTOR阻害薬及びシスプラチン投与群の卵胞数はおおむね同等であることが示された。体重や死亡率などで薬剤毒性を判定したところ、シスプラチン投与群は非シスプラチン投与群に比べ有意な体重減少を認めた。しかしながらエベロリムス投与群は非エベロリムス投与群と比べ体重に有意差を認めなかった。次に副次的評価項目としての卵巣毒性の評価を、卵巣重量と卵巣径の計測で行った。結果としてはいずれもシスプラチン群はコントロール群より値が低く、mTOR阻害薬及びシスプラチン併用投与群はシスプラチン群より値が多く、コントロール群とmTOR阻害薬及びシスプラチン投与群の卵胞数は同等であった。以上より、mTOR阻害剤であるエベロリムスはシスプラチンのマウスに対する卵巣毒性を再現性をもって、全身毒性を上乗せすることなく改善すると結論づけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017~2018年度においては、mTOR阻害剤であるエベロリムスがシスプラチンのマウスに対する卵巣毒性を改善するかどうかの検証を行い、インビボモデルにおいてmTOR阻害薬はシスプラチン誘発性卵巣毒性に対する保護作用を持つことが再現性を持って示された。また、シスプラチンに対するエベロリムスの全身毒性の上乗せがないことを示した。 現在、機序の解明のため、Aktと4E-BP1のリン酸化についてウエスタンブロッティングで検討しており、また5週齢のBalbc nu/nuマウスに細胞株はMDA-MB-231を背部皮下移植して担癌モデルマウスを作成中であり、計画は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1)担癌マウスモデルで卵巣保護薬が卵巣毒性を示す抗癌剤から卵巣保護作用の有無、2)担癌モデルマウスに対する卵巣保護薬の併用による抗癌剤の抗腫瘍効果ならびに全身毒性への影響の有無、3)抗癌剤と卵巣保護薬の併用における卵巣組織中の卵胞活性経路の分子レベルの検討、の3つの課題について研究を進める予定である。
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