研究課題/領域番号 |
17K11275
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安彦 郁 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20508246)
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研究分担者 |
村上 隆介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (40782363)
濱西 潤三 京都大学, 医学研究科, 講師 (80378736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ケモカイン / 卵巣癌 / 抗腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
卵巣癌の遺伝子発現を網羅的に調べると、Mesenchymal subtypeとよばれる癌の上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)が起こっている症例において予後不良であることが知られている。そこでEMT関連遺伝子であるSnailに着目し、以下の研究を行った。まず、Mesenchymal subtypeにおいてSnailが高発現していることを既存のマイクロアレイデータを解析して確認した。次に、Snailの発現をShRNAで抑制したマウス卵巣癌細胞株を作成し、免疫正常マウスにおける腫瘍増殖を観察した。すると、Snail抑制株では腫瘍増殖が抑制され、腫瘍内の細胞傷害性T細胞が増加し、抗腫瘍免疫が賦活化していることがわかった。Snail の発現が高い卵巣がんは、 ケモカインであるCXCL1とCXCL2を分泌していることをELISAで示した。CXCL1とCXCL2は、卵巣癌の腫瘍内の骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)に発現しているケモカイン受容体CXCR2 を介して、 MDSC を遊走させることを示した。Snailが直接、またはNF-kBを介して、CXCL1やCXCL2を発現亢進させることも明らかにした。以上より、SnailはCXCL1やCXCL2の発現亢進を介して、腫瘍内にMDSCを遊走させて、抗腫瘍免疫を抑制していることが示唆された。CXCR2の阻害薬を投与すると、Snailの高い卵巣癌モデルの腫瘍増殖を抑制することができることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EMT関連遺伝子の一つであるSnailの抗腫瘍免疫に対する働きを示すデータが得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
卵巣癌の臨床サンプル、特に血液を用いて、ケモカインの変化と腫瘍内の抗腫瘍免疫の状態や予後、抗がん剤への反応性などとの関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床サンプルの収集があまり順調でなかったため、当該年度中には臨床サンプルの解析が十分に行えなかった。このため次年度へ解析費用を繰り越す結果となったが、2018年度以降にも臨床サンプルの収集を積極的に行い、十分なサンプル数を解析する計画である。
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