研究課題
我々は、「卵巣癌において、MDSCが癌幹細胞化を促進し、MDSCと癌幹細胞が協調しながら免疫寛容を誘導し、免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示す」と考え、研究を行ってきた。平成29-30年度の研究において、①MDSCが卵巣癌の癌幹細胞化を促進すること、②癌幹細胞は非癌幹細胞に比べPD-L1の発現が亢進していること、③MDSCがプロスタンディンE2(PGE2)を分泌すること、④MDSCから分泌されたPGE2が卵巣癌の幹細胞化を促進すること、⑤MDSC-PGE2-癌幹細胞axisが、卵巣癌のみならず、子宮頸癌や子宮体癌にも存在すること、⑥PGE2の産生阻害薬であるセレコキシブを用いれば、MDSCによる癌幹細胞誘導作用を効果的に抑制できることを見出した。これらの事実は、MDSCが何らかの癌幹細胞化を促進して治療抵抗性に寄与するとともに、抗腫瘍免疫を負に制御している可能性を示唆する結果と解釈できる。平成31年度は、癌幹細胞におけるPD-L1発現の亢進にMDSCが関与するか?関与するとすればどのようなメカニズムによるのか?について研究を行った。その結果、MDSCが分泌するPGE2が、mTOR経路の活性化を介して、癌細胞のPD-L1の発現を亢進することが明らかになった。この3年間の研究により、MDSCが増加した卵巣癌(G-CSF産生腫瘍やIL-6産生腫瘍)では、MDSCが分泌したPGE2が、癌幹細胞化を促進すると同時と、PD-L1の発現を亢進し、免疫寛容を誘導することで癌の進展を促進している可能性が示され、米国の科学誌に投稿中である(Cancer Immunology Immunotherapy:リバイスを投稿中)。現在、MDSC阻害治療による癌幹細胞化の抑制が、①化学療法・放射線治療の治療効果を増強するか、②免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強するかを研究しているところである。
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