研究課題/領域番号 |
17K11278
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松崎 慎哉 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00467565)
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研究分担者 |
上田 豊 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10346215)
岩宮 正 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40790936) [辞退]
小林 栄仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50614773)
吉野 潔 産業医科大学, 医学部, 教授 (90362730)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 婦人科腫瘍 / プラチナ耐性 / 肉腫 / 子宮平滑筋肉腫 |
研究実績の概要 |
①子宮平滑筋肉腫細胞のPDXマウスの樹立 PDXマウスの作成は子宮平滑筋肉腫(以下、LMS)の手術検体を超免疫不全マウス(NOGマウス)の皮下に移植することで2例、樹立に成功した。樹立されたPDXマウスの腫瘍に対して免疫組織化学染色法を行いATP7Bの発現を解析したが、発現を認めなかった。しかし、昨年度同定したLMS細胞に特異的に発現する膜蛋白質Xの発現を認めた。引き続きLMSのPDXマウスの樹立をすすめる予定とした。 ②膜蛋白質Xの中和抗体は子宮平滑筋肉腫細胞株の増殖を抑制した 膜蛋白質Xの中和抗体をLMS細胞株であるSK-LMSにin vitroにおいて投与したところ、7日目に28.5%の増殖抑制が認められた。そのため、膜蛋白質Xに対する中和抗体がLMSの創薬につながる可能性を見いだした。しかし、SK-LMSのXenograftモデルに対し中和抗体を投与したが、約4%の腫瘍抑制しか認めず有意な効果を認めなかった。そのため、膜蛋白質Xの中和抗体に抗癌剤をconjugateしたAntibody-Drug Conjugate (ADC) の作成予定とした。 ③ATP7Bの作用を阻害する因子Cを同定 我々はATP7Bが細胞内から細胞外へと排出を行うと報告されている因子CをSK-LMS細胞株に暴露した後に、プラチナ製剤を投与したところ因子C非暴露群ではCisplatinのIC50値が17.2μMであったが、因子Cを暴露した後にCisplatinを投与した群ではIC50が6.8μMと著明に改善することを見いだした。加えて、因子Cは細胞傷害性を示していないことも示され、今後の検討が非常に期待される結果であった。因子CはATP7Bのプラチナ製剤の細胞外排出の働きを阻害していると推察され、非常に有望な因子であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度計画はほぼ終了している。因子Cの投与がプラチナ耐性の改善を示しており、ATP7Bのプラチナ製剤の細胞外への排出を阻害しているかの検討をつづける。同時に膜蛋白質XがLMS細胞株における有望な治療標的になりうることがわかったため、膜蛋白質Xの解析も続ける。
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今後の研究の推進方策 |
<平成31年度> ①PDXマウスの樹立を続け、ATP7Bや膜蛋白質Xの発現を有するPDXマウスを複数系統樹立できる様に、LMS臨床検体をマウスに対して移植し続ける予定である。 ②膜蛋白質Xに対するADCを作成する。 ③因子Cを投与したのちにCisplatinを投与することでin vitroでえられた結果の様に、Xenograftモデルにおいてもプラチナ耐性の改善に有効かの検討を行う。 ④因子CがATP7Bのプラチナ排出を阻害しているかを検討し、そうである場合はその機序を解明する。また、因子Cの至適投与量をin vitro、in vivoにおいて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
膜蛋白質Xに対するADC作成のために試薬を購入する予定である。また、ATP7Bの働きを阻害する因子Cの薬物動態の解析に必要な各種試薬を購入する予定である。マウスを用いた解析も行うため、マウスの購入とその管理に資金を要する。
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