研究課題/領域番号 |
17K11282
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
八木 裕史 九州大学, 医学研究院, 助教 (70623552)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Gタンパク / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
卵巣癌の悪性形質獲得におけるGa13の役割を解析するために、卵巣癌細胞株OVASを用いた実験を行った。Ga13安定発現株、Ga13恒常的活性変異体(Ga13QL)安定発現株を樹立し、野生型OVASとの比較を行った。その結果、Ga13QL安定発現株では、Eカドヘリンタンパクの発現が低下している一方で、Nカドヘリンタンパクの発現が増加を認め、また、細胞運動能が亢進していることが示された。これらの結果から、Ga13の活性化は、卵巣癌細胞に上皮間葉転換(EMT)様の変化を誘導することが示唆された。 また、Ga13下流のどのようなシグナル伝達経路が、EMT様の変化を誘導するのかを解析するために、GPCRおよびGa13の遺伝子変異体を用いた実験を行った。その結果、Ga13の活性化は、Hippoシグナル伝達経路において中心的役割を果たしている分子であるLATS1を制御することによって、EMTを誘導していることが明らかとなった。これまでの報告では、Ga13の活性化はLATS1の脱リン酸化を誘導し、それに伴うYAPの脱リン酸化によって、Hippoシグナル経路が制御されているとされてきた。しかし、今回の解析の結果、Ga13の活性化は、T1079の脱リン酸化を誘導し、それに引き続くYAPの脱リン酸化を誘導する一方で、S909の著明なリン酸化を誘導し、それに引き続くLATS1のタンパク分解を誘導することが明らかとなった。また、shRNAを用いた解析から、LATS1の発現抑制が、卵巣癌細胞にEMT様の変化を誘導することが示された。これらの結果から、Ga13の活性化は、LATS1のリン酸化とそれに引き続くタンパク分解を介して、卵巣癌細胞にEMT様の変化を誘導している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りの実験が遂行できている。 Ga13の活性化によるHippoシグナル経路の制御について集中的な解析を行った結果、LATS1の制御に関する新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
基礎実験の結果から、卵巣癌細胞においては、Ga13の活性化がLATS1のリン酸化、それに引き続くタンパク分解を介して、EMT様の変化を誘導することが明らかとなった。今後は、ヒト卵巣癌組織におけるLATS1タンパクの発現レベルを解析した上で、論文作成および学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた卵巣癌細胞株を用いた実験を次年度に持ち越したため、物品購入費を次年度に持ち越した
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