研究課題
三量体GタンパクのひとつであるGa13は、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、口腔癌など様々な癌種において高発現していることが報告されている。本研究では卵巣癌の発生および悪性形質獲得における三量体GタンパクGa13の役割について解析を行った。ヒト卵巣癌細胞株を用いた解析の結果、Ga13の高発現や活性化に伴い、上皮間葉転換様(EMT)の形質の変化が誘導されることが示された。Ga13の活性化がどのようなシグナル伝達経路を介してEMTを誘導しているのかを解析するために、GPCRの遺伝子変異体および三量体Gタンパクのキメラタンパクを用いた実験系を確立した。この実験系を用いた解析の結果、Ga13はHippoシグナル伝達経路の制御を介してEMTを誘導していることが示唆された。Hippoシグナル経路の中で中心的な役割を果たしているLATS1は、様々な癌において発現が低下していることが報告されている。今回の解析の結果、Ga13の高発現や活性化に伴い、LATS1の発現レベルが低下することが示された。プロテアソーム阻害剤を用いた解析の結果、Ga13により誘導されれるLATS1の発現低下はmRNAレベルではなく、タンパクレベルの制御であることが示された。様々なLATS1アミノ酸置換体を用いた解析の結果、Ga13の活性化は、LATS1のリン酸化(セリン909)とそれに引き続くE3ユビキチンリガーゼのITCHによるタンパク分解が誘導されることが示された。また、ヒト卵巣癌組織を用いた免疫組織染色の結果、正常卵巣と比較して癌組織においてLATS1の発現が低下していることが示された。これらの研究成果を、FASEB Journal誌に報告した(Yagi et al. FASEB J 2019)。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
FASEB Journal
巻: 33 ページ: 13683-13694
10.1096/fj.201901278R