子宮内膜症は女性の生涯にわたってquality of lifeを損ねる疾患である。近年、子宮内膜症病変局所の炎症反応が慢性炎症として全身性に影響を及ぼし、子宮内膜症に罹患することが動脈硬化および心血管系疾患のリスク因子であることが明らかにされつつある。本研究では、①日本ナースヘルス研究のコホートを用いた臨床疫学的研究により、子宮内膜症罹患女性の心血管系疾患発症のリスク因子を明らかにすること、②子宮内膜症罹患女性に対するホルモン療法が慢性炎症を改善するか否かを明らかにすることを目的とした。研究最終年度では、日本ナースヘルス研究のコホートを用いた前向き観察研究の検討を行った。心血管系疾患は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、一過性虚血発作とした。コホートを2群、A群:登録時年齢40歳以上かつ閉経前の女性、n=6199名とB群:登録時閉経女性、n=2086名、に分類した。子宮内膜症女性の割合がA群では5.6%、B群では7.7%でった。A群では、心血管系疾患を発症した割合は、子宮内膜症なしでの女性では0.4%、子宮内膜症ありの女性では1.3%であった。B群では、心血管系疾患を発症した割合は、子宮内膜症無しの女性では1.3%、子宮内膜症ありの女性では0.01%であった。A群、B群共に統計学的に子宮内膜症の有無で心血管系疾患の発症割合に有意差は認めなかった。
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