研究課題/領域番号 |
17K11288
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
島田 勝 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40301452)
|
研究分担者 |
山下 暁朗 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (20405020)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | HPV / virus binding protein |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトパピロ-マウイルス(HPV)の細胞受容体の同定およびウイルス感染・発がんに関わる細胞因子を網羅的に解析し、次世代のHPV感染に対する治療・予防法の確立を目的とする。具体的には、①HPV感染時に受容体として機能する分子の同定およびウイルス感染予防法の開発。②タグ付きHPV遺伝子産物に結合する細胞因子を網羅的に同定、解析することによるHPVにおける発がん分子メカニズムの解明。③ハプロ-ド細胞のジーントラップ法によるHPV感染に関わる必須な細胞因子の探索。
本年度研究計画では、前年度に同定したHPV VLP(viral-like particle)と結合したHPV受容体候補であるBP-1蛋白の機能解析およびHPV発がんに関わる細胞因子の網羅的な解析を行った。この結果、①BP-1 siRNAを処理した細胞ではHPV VLPの感染が著しく低下した。BP-1は細胞膜に局在していること、またHPV VLPと共局在していることを共焦点顕微鏡で確認した。BP-1とHPV VLPの結合も免疫沈降法で確認した。今後はBP-1およびHPV VLP L1蛋白の結合ドメインの同定を行い、さらにそれらドメインの変異編集により更なるドメインの結合を認証する。 ②HPV発がん遺伝子であるE6及びE7蛋白は結合細胞因子の網羅的な解析により、いくつもの新規結合細胞因子を見つけた。また、一部の細胞因子におけるウイルス癌化の役割について詳細に解析した。これまで、HPV発がん遺伝子であるE6及びE7蛋白はcaspase依存性経路の抑制を介してウイルス感染細胞を癌化することが分かっていたが、我々はE6、E7蛋白はcaspase非依存性経路も抑制していることを明らかにした。来年度も引き続き更なる詳細な解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画ではHPV感染における細胞受容体候補であるBP-1蛋白を詳細に解析した。また、HPV発がん遺伝子であるE6、E7の結合細胞因子を網羅的に解析した。E6、E7はcaspase非依存性経路も抑制していることを明らかにした。それらの結果より、本年度おおむね順調に進展していると判定した。
|
今後の研究の推進方策 |
①【同定された細胞因子の機能解析】 HPV発がん遺伝子であるE6、E7におけるcaspase非依存性経路の作用遺伝子について詳細な解析を行う。具体的にはそれら遺伝子のsiRNAを使って細胞癌化の解析、またはそれら遺伝子を欠損あるいは高発現の状況下で細胞癌化への影響を解析する。更にprimary cellsを使用し、解析も行う予定である。 ② 【HPV感染予防及び治療法の開発】 BP-1に対するモノクローナル抗体をマウスで作成し、BP-1発現細胞を用いてBP-1細胞表面ドメインに結合する抗体をフローサイトメトリーで選択する。更にHPV VLPとBP-1細胞表面ドメインの結合を阻害できるモノクローナル抗体を選出する。その抗体を用いて、細胞および動物モデルでのHPV感染を阻害できるか検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
同定したHPV E6、E7結合細胞遺伝子の詳しい解析とBP-1抗体の作成および作用解析に使用する試薬、抗体などの購入のため、来年度の経費を請求する。
|