本研究では、ヒトパピロ-マウイルス(HPV)の細胞受容体の同定およびウイルス感染・発がんに関わる細胞因子を網羅的に解析し、次世代のHPV感染に対する治療・予防法の確立を目的とする。具体的には、①HPV感染時に受容体として機能する分子の同定およびウイルス感染予防法の開発。②タグ付きHPV遺伝子産物に結合する細胞因子を網羅的に同定、解析することによるHPVにおける発がん分子メカニズムの解明。③ハプロ-ド細胞のジーントラップ法によるHPV感染に関わる必須な細胞因子の探索。
本年度は、前年度で同定したHPV E6の結合遺伝子であるAIF (apoptosis-inducing factor)について詳細な解析をおこなった。AIFはcaspase非依存性アポトーシスの重要な誘導因子である。高病原性(HPV16)と低病原性HPV(HPV6)由来のE6はどちらもAIFと結合できる。しかし、高病原性由来のE6だけがAIFを分解できる。更にこの分解はプロテアーゼ阻害薬であるM132によって阻害できた。HPV16E6はAIFによる細胞クロマチン分解を抑制し、アポトーシスを阻害した。AIFは高病原性HPV E6がAIFを抑制したことによって、caspase非依存性癌化の経路を発見した。AIFをターゲットとした癌治療薬の開発は極めて重要である。
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