研究課題/領域番号 |
17K11293
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
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研究分担者 |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
馬淵 泰士 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80382357)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / ゲノム編集 / PD-L1 / 免疫寛容 / 腫瘍免疫 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 腹膜播種 |
研究実績の概要 |
本年度は、ゲノム編集技術である CRISPR/Cas9 systemを用いて,マウス卵巣癌細胞株であるID8のPD-L1遺伝子欠損細胞株 (PD-L1-KO ID8)を 樹立し,実験に用いた. PD-L1-KO ID8およびControl ID8をC57BL/6マウスに腹腔内移植後 腫瘍増殖能と生存期間を比較検討したところ,PD-L1-KO ID8移植マウスはControl ID8 移植マウスと比較して,生存期間が有意に延長した. さらにシスプラチン腹腔内投与下では、PD-L1欠損による生存期間延長効果はさらに顕著となった. PD-L1-KO ID8移植マウスは Control ID8移植マウスと比較して,腹腔内移植後70日目の播種腫瘍重量,および腹水量 が有意に減少した.また免疫組織化学的検討では,PD-L1-KO ID8移植マウスにおいて, Control ID8移植マウスと比べて,腫瘍内のCD4+ T細胞,CD8+ T細胞,NK細胞,および M1マクロファージの数は有意に増加し,一方でFoxp3+ Treg細胞,M2マクロファージの数は 有意に減少していた. 本研究において,腫瘍細胞上の PD-L1遺伝子を完全に欠損させることで,腫瘍微小環境において,CD4+ T細胞,CD8+ T細胞, NK細胞,およびM1マクロファージが増加し,一方でTreg細胞が減少し,さらに種々の サイトカイン・ケモカインが調節されることで,抗腫瘍免疫が促進され,腫瘍増殖が抑制 されることが示された. これらの結果により, PD-L1を標的とする治療が,卵巣癌の新たな治療戦略となり得る可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集技術により、PD-L1完全欠損させたマウス卵巣癌細胞株を安定して使用することが可能となり、in vivoにおけるPD-L1の機能解析と腫瘍微小環境内に遊走・浸潤した免疫細胞のプロファイリングを解明でき、標的治療による生存期間延長の治療効果の可能性について、検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、腫瘍細胞のPD-L1を欠損させた場合における、卵巣癌の腫瘍微小環境におけるサイトカイン・ケモカインのプロファイリングを行う。 PD-L1-KO ID8移植マウスとそれぞれのControl ID8移植マウスから得られた腫瘍組織からmRNAを抽出後,real time RT-PCRを行い,腫瘍内のサイトカインおよびケモカインのmRNAの発現を比較検討する.さらにPD-L1-KO ID8移植マウスにおける腹水中のサイトカイン・ケモカインおよび血管新生因子をELISAで測定し,比較検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬代として想定していた物品費が、本年度中の実験の進行状況により、10179円のみ余ったが、次年度の助成金と合わせて、全額実験費用として不可欠であり、次年度おこなう研究において使用する
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