研究実績の概要 |
子宮頸がん関連ヒトパピローマウイルス(HPV)14タイプの中でも16型 (HPV16) は発癌リスクが最も高い。HPV16はゲノムシーケンスの違いによってvariant [4つのlineage (A, B, C, D), さらに9つのsublineage (A1, A2, A3, A4, B1, B2, D1, D2, D3)] に亜分類される。variantによって発癌リスクが異なることが報告されているが、発がんリスクの高いvariantは人種や地域によって異なる。日本人において発がんリスクの高いvariantを同定するために、HPV16陽性の日本人女性 100名 [細胞診正常 (NILM) 22名, CIN1 13名, CIN2/3 25名, 浸潤癌 (ICC) 40名] の子宮頸部擦過細胞からDNAを抽出し、PCRによりHPV16のウイルスDNA全長を増幅した。次世代シークエンサーによるフルゲノムシーケンスの結果からlineage/ sublineageを決定した。lineage別ではA variantが圧倒的に多かった (A=94, B=0, C=2, D=4)。系統樹解析においてA variantの中で独立したクラスターを形成するグループ (Ax: 16検体) が認められ、これらは既知のsublineageに分類できない、日本人特有の新規variantと考えられた。CIN2/3とICCにおける各種variantの検出頻度の違いからICCへの進展リスクを推定すると、A4 variantではA1 variantと比較してICCへの進展リスクが格段に高かった (オッズ比12.4、95%CI 2.76-55.5、p<0.001)。日本人ではA variantの検出頻度が特に高く、海外の報告とは大きく異なる。A4 variantでは変異E7蛋白による機能の違いが浸潤能の獲得に関与している可能性があり、今後の研究課題である。
|