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2018 年度 実施状況報告書

子宮頸癌の診断・治療における指標としてのHPV型の確立と型別病態メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K11297
研究機関昭和大学

研究代表者

松本 光司  昭和大学, 医学部, 教授 (30302714)

研究分担者 柊元 巌  国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (70291127)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードヒトパピローマウイルス / HPV / 子宮頸癌 / 子宮頸部上皮内腫瘍 / CIN
研究実績の概要

子宮頸がん関連ヒトパピローマウイルス(HPV)14タイプの中でも16型 (HPV16) は発癌リスクが最も高い。HPV16はゲノムシーケンスの違いによってvariant [4つのlineage (A, B, C, D), さらに9つのsublineage (A1, A2, A3, A4, B1, B2, D1, D2, D3)] に亜分類される。variantによって発癌リスクが異なることが報告されているが、発がんリスクの高いvariantは人種や地域によって異なる。日本人において発がんリスクの高いvariantを同定するために、HPV16陽性の日本人女性 100名 [細胞診正常 (NILM) 22名, CIN1 13名, CIN2/3 25名, 浸潤癌 (ICC) 40名] の子宮頸部擦過細胞からDNAを抽出し、PCRによりHPV16のウイルスDNA全長を増幅した。次世代シークエンサーによるフルゲノムシーケンスの結果からlineage/ sublineageを決定した。lineage別ではA variantが圧倒的に多かった (A=94, B=0, C=2, D=4)。系統樹解析においてA variantの中で独立したクラスターを形成するグループ (Ax: 16検体) が認められ、これらは既知のsublineageに分類できない、日本人特有の新規variantと考えられた。CIN2/3とICCにおける各種variantの検出頻度の違いからICCへの進展リスクを推定すると、A4 variantではA1 variantと比較してICCへの進展リスクが格段に高かった (オッズ比12.4、95%CI 2.76-55.5、p<0.001)。日本人ではA variantの検出頻度が特に高く、海外の報告とは大きく異なる。A4 variantでは変異E7蛋白による機能の違いが浸潤能の獲得に関与している可能性があり、今後の研究課題である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

次世代シークエンサーを用いたHPVゲノムの配列解析はすでに確立しており順調であるが、HPVゲノム組込部位の解析は難航している。子宮頸癌およびCIN病変におけるHPV組込部位を次世代シーケンサーを用いて網羅的に同定する解析は未だ試行錯誤を繰り返しており、その解析系を確立できていない。ウイルスゲノム側にプライマーを設定してウイルスゲノム側からヒトゲノムをシーケンスするやり方には限界があるのかもしれない。新たな解析方法を模索中である。

今後の研究の推進方策

2018年度はHPV16のウイルスゲノム変異と発がんリスクの関連を調べたが、今後はHPV16陽性子宮頸癌のなかでウイルスゲノム変異が子宮頸癌の臨床病理学的所見や予後とどのように関連するかどうかを調べたい。これにはさらに症例の蓄積が必要で、関連病院などからも検体提供を受けて、協力体制を整える。HPVゲノムの組込み部位の解析では、引き続き効率のよいアッセイ系の確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

HPV16のウイルスゲノム解析は進んだが、HPVゲノムの組込み部位解析のアッセイ系が確立していないため未だ予備実験を行っている段階である。そのため、次年度使用額が生じた。2019年度は本アッセイ系が確立されれば、多量の臨床検体を扱うことになり、次世代シーケンサーの試薬などで支出額が大幅に増加する可能性がある。また、2019年度は最終年度であるため、HPVのウイルスゲノム配列の違い (HPVタイプおよびバリアント) が臨床病理像や予後にどのような影響を及ぼすかについて最終報告を行う予定で、英文校正費用・論文投稿料が必要になると予想される。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Whole-Genome Analysis of Human Papillomavirus Type 16 Prevalent in Japanese Women with or without Cervical Lesions2019

    • 著者名/発表者名
      Hirose Yusuke、Onuki Mamiko、Tenjimbayashi Yuri、Yamaguchi-Naka Mayuko、Mori Seiichiro、Tasaka Nobutaka、Satoh Toyomi、Morisada Tohru、Iwata Takashi、Kiyono Tohru、Mimura Takashi、Sekizawa Akihiko、Matsumoto Koji、Kukimoto Iwao
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 11 ページ: 350~350

    • DOI

      10.3390/v11040350

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Human papillomavirus genotype and prognosis of cervical cancer: Favorable survival of patients with HPV16-positive tumors2018

    • 著者名/発表者名
      Onuki Mamiko、Matsumoto Koji、Tenjimbayashi Yuri、Tasaka Nobutaka、Akiyama Azusa、Sakurai Manabu、Minaguchi Takeo、Oki Akinori、Satoh Toyomi、Yoshikawa Hiroyuki
    • 雑誌名

      Papillomavirus Research

      巻: 6 ページ: 41~45

    • DOI

      10.1016/j.pvr.2018.10.005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] APOBEC signature mutagenesis in HPV16/52/58 genomes and its relevance to cervical carcinogenesis2018

    • 著者名/発表者名
      Hirose Y, Tenjimbayashi Y, Onuki M, Iwata T, Matsumoto K, Kukimoto I
    • 学会等名
      International Papillomavirus Conference 2018
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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