研究実績の概要 |
HPVタイプ別の進展リスク評価とワクチンの予防効果予測を行うために、HPVワクチンの有効性評価のための疫学研究 MINT スタディ I に登録された5045例 [CIN1 n=573, CIN2/3 n=3219, adenocarcinoma in situ (AIS) n=123, 浸潤癌 (ICC) n=1130] を対象にHPVタイピングを行いそのデータを解析した。HPV DNAはCIN1の85.5%, CIN2-3/AISの95.6%, ICCの91.1%に検出された。また重複感染はCIN1の42.9%, CIN2-3/AISの40.4%, ICCの23.7%に見られた。複数のHPV型による重複感染を解析に加えるため、重複感染例では単感染者における型分布割合をもとに相対的寄与 (RC, relative contribution) を計算した。HPV型別のCIN2以上への相対的進展リスクとして、CIN1とCIN2-3/AIS/ICCの2群における各HPV型のRC ratio (prevalence ratio)を算出すると、HPV型別の進展リスク (RC ratio) はHPV16 (3.78, 95%信頼区間3.01-4.98, p<0.0001), HPV31 (2.51, 同1.54-5.24, p<0.0001), HPV18 (2.43, 同1.59-4.32, p<0.0001), HPV35 (1.56, 同0.43-8.36), HPV33 (1.01, 同0.49-3.31), HPV52 (0.99, 同.76-1.33), HPV58 (0.97, 同0.75-1.32) の順で高いことがわかった。HPV16/18/31/33/35/45/52/58の8タイプのいずれかに陽性の場合の相対進展リスクは1.87 (95%信頼区間1.71-2.05, p<0.0001) であったのに対し、その他のハイリスク6タイプ (HPV39/51/56/59/66/68) の場合には0.17 (同 0.14-0.22) となり、従来の報告どおり発がん性HPVの中でも2つのグループの間で大きなリスク差が認められた。HPV6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58のRCを用いて各ワクチンの子宮頸癌に対する発症予防効果を予測すると、9価ワクチン(93.8%, 95%信頼区間 92.4-95.3) では2価ワクチン (84.9%, 同82.7-87.0) や4価ワクチン (85.1%, 同 82.9-87.2) よりもさらに約10%予防効果が高く、子宮頸癌の90%以上を予防できると推測された。
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